筑波大学3年 甲斐いづみ
7月28日
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大学生のほとんどがテスト期間であろう7月下旬。テスト勉強からの現実逃避には幾つかの型があるが、私は断然読書派である。それも一度読んだ本をじっくりじっくり味わい返すという流派を誇っている。今日読んだのは谷川俊太郎さんのエッセイ『
ひとり暮らし』(新潮文庫)だ。元々は、夏の風物詩「新潮文庫の100冊」キャンペーンの特典であるキュンタしおり欲しさになんとなく買ったものであるが、読み始めるとこれが非常に面白かった。今一度読み返してもやはり素晴らしい。谷川さんは詩人であるが彼の詩は柔らかいと同時に鋭い。エッセイも同じように、淡々と軽妙でありながらハッとさせられる。世界からほんの少し遠いところに身を置いている詩人というものは、日頃からこんなに思索が深いのかと驚くばかりだ。谷川さん独特のちょっとブラックでクスッと笑えるユーモアもいくつも散りばめてあり、久しぶりに「読み終わるのが惜しい」と感じる本であった。
7月30日

今日は私の21歳のお誕生日である。ハッピーバースデイ to 私というわけだ。友人によると、21歳はとうとう本当に自分で自分の人生を切り盛りしていく重要な年齢らしい。そんな記念すべき日には記念すべき1冊を読むべしとワクワクしながら本屋へ行った。そうして手に取ったのが穂村弘さんの『
はじめての短歌』(河出文庫)である。棚の前でパラパラっとめくって「あ、面白い」と思った。最近直感で良いと感じる本に出会えていなかったので即購入し、ケーキもきっちり2つ買って(モンブランとショートケーキにした)ホクホク顔で帰宅した。読んでみるとこの本、短歌の本だが実は短歌の本じゃない。何を言ってるんだと思われるだろう。しかしそうとしか言いようがない。内容としては、一般から集まった良い短歌に対して「改悪例」をつけることで元の短歌の良さを解説するというものだ。この解説も大変面白く、言葉の一文字にこだわることやそこから生まれる絶妙な心の機微を愛したくなる。そしてなんといっても本全体を通して語られる「生きる」と「生き延びる」の違いには考えさせられた。社会で生きていくことは「生き延びる」ことに大変近い。これから私は社会に出ていくだろう。「生きる」こととその楽しみを忘れたくないなと純粋に思った。