【特集】グローバル人材の育成を、ともに進めていくために 留学の、その先へ。 【特集】グローバル人材の育成を、ともに進めていくために 留学の、その先へ。 【特集】大学と大学生協のシナジーで進める施設環境づくり キャンパス、再構築。

文部科学省では大学のグローバル化について、「急速に進む社会や産業界のグローバル化の中で、大学の教育研究機能が社会の発展を支える重要な要素の一つとして、わが国の国際競争力を高めることに貢献することが求められている」としています。
しかし、コロナ禍が大学のグローバル化の進展に歯止めをかけ、学生の留学志向に水を差してしまったこともまた事実。
コロナ禍を経たいま、立命館大学のグローバル人材育成と大学生協はどう向き合っていくべきなのでしょうか。

取材にご協力いただいた皆さん


鈴木 華子先生
立命館大学 総合心理学部
准教授・副学部長


坂本 恵理さん
立命館大学
総合心理学部事務室
国際・学生留学支援担当


所川 彩希さん
立命館大学 経営学部3年
(バレンシアプログラムに
参加し帰国)


鈴木 英さん
立命館大学 総合心理学部4年
(前立命館生協学生委員長、
現在大学生協連
関西北陸ブロック学生事務局
高校を1年休学し
アルゼンチン留学経験有)


コーディネーター
生駒 隆史
立命館生協職員・
OICショップ店長

実は150年前からグローバル。学祖から受け継がれてきた進取の気風。

立命館大学の歴史は、1869(明治2)年、近代の幕開けを担う新たな人材を育てるために西園寺公望がつくった私塾「立命館」からはじまります。その後、文部大臣時代の西園寺の秘書であった中川小十郎がその意志を引き継ぎ、前身となる「私立京都法政学校」を創立しました。そして、1913年に西園寺の承諾を得て「立命館」の名称を継承し、現在では150年以上の歴史を持つ日本を代表する私立大学となっています。

西園寺にはフランス留学の経験もあり、オーストリア、ドイツ、ベルギー各国の駐在公使を歴任した後には外務大臣を務めるなど、当時としては極めて先進的な国際感覚を身に付けた人物だったと言えるでしょう。中川は、そんな西園寺の「自由主義と国際主義」の精神を受け継ぎ、「自由にして清新」な学府、つまり自由にして進取の気風に富んだ学園の創造を目指しました。この精神は、立命館大学の建学の精神として今日まで受け継がれ、1980年代以降は国際関係学部の開設などさらなる国際化に取り組み、立命館アジア太平洋大学(APU)と附属校を含めた立命館学園全体でのグローバル化を追求してきました。この結果、日本の高等教育のグローバル化を牽引する大学の一つとして「スーパーグローバル大学創成支援事業」に選定されています。

自由な挑戦が希望に満ちた未来につながる社会を目指すべく策定された学園ビジョン「R2030」においては、「新たな価値創造の実現」や「テクノロジーを活かした教育・研究の進化」「未来社会を描くキャンパス創造」「シームレスな学園展開」など6つの政策目標が掲げられていますが、「『グローバル社会への主体的貢献』『多様性を活かす学園創造』といったグローバル化を意識した政策目標が含まれていることに大きな意味があると思っています」と総合心理学部の鈴木華子先生。基本的には、現在と将来のグローバル社会に潜むさまざまな課題の解決に努め、国際標準の学びの質保証、海外大学をはじめとする国際的なネットワークを通じた教育・研究連携を通じて、世界のさまざまな国・地域、多様な文化的背景を持った児童・生徒・学生・教職員・校友が、さまざまな形で交流・共修することのできる教育環境を創造するものとしています。

立命館大学の学祖、西園寺公望
立命館大学の学祖、西園寺公望

初期の私立京都法政学校だった清輝楼
初期の私立京都法政学校だった清輝楼

プロジェクト発信型英語プログラムと、単純接触効果で高まる留学への興味。

立命館大学の大阪いばらきキャンパス
立命館大学の大阪いばらきキャンパス

立命館大学では国際的なネットワークを通じた教育連携の一環として、世界69カ国・地域の474の大学・研究機関とのネットワークを活かし、充実した海外留学プログラムを提供しています。昨年度の立命館大学への留学生の数は正規、短期を合わせて3000人を超え、全国3位、西日本で1位の受け入れ数を誇り、海外の大学に留学する学生の数においても、2022年度には837名の学部生・院生を派遣し、協定に基づく日本人学生の海外派遣数では日本の大学の中で第12位となっています。こうした実績の背景には、入門レベルの短期の語学研修、異文化体験プログラムから長期の交換留学や共同学位プログラム、映像やスポーツなど学部の専門科目に特化したプログラムなど、多様な学生のニーズに合致するプログラムを提供できていることが挙げられます。

また、「アジアのゲートウェイ」をコンセプトとして多くの英語基準学生が集まり、立命館大学において最も多くの留学生が在籍する「大阪いばらきキャンパス」にある総合心理学部では、「時代を先取りする先進的な開発プログラムとして『プロジェクト発信型英語プログラム』を展開しています。このプログラムでは国際社会で活躍するための英語運⽤能⼒を培うとともに、論理的思考⼒やコミュニケーション能⼒も併せて養成。国際化が進み、国際的な観点と実⾏能⼒がますます必要とされるこれからの社会において求められる⼈材となるために必要な高度なグローバル・コミュニケーション能⼒を育みます」(鈴木先生)。

このようにさまざまなプログラムや環境づくりを通じて多様な国々への興味を促し、理解を深め、その結果さらなるアクションである留学へと学生たちを後押し。そのポイントを鈴木先生は「単純接触効果をいかに増やすかという点にあると思っています。元々興味がなかった物事や人物に対してでも、複数回接触を繰り返すことで、興味を持つようになるという心理的現象です。仲谷総長も常々おっしゃっていますが、日常の中で世界を感じることのできるグローバル化の実現が、単純接触効果をさらに高めてくれることにつながるのではないでしょうか」。

大学生協のインターンシップ留学、Valencia International College Program。

Valencia International College Programの留学先、米国・オーランドの朝
Valencia International College Programの留学先、米国・オーランドの朝

そもそも学生が海外に留学し、国際感覚を磨くことは、国際体験を通じた国際理解・知識の拡大、語学力の向上など、学生の能力や可能性を広げ、留学を通じ国境を越えた幅広い人的ネットワークの形成につながります。

アルゼンチンへの留学経験を持つ鈴木(英)さんは、「高校に入って大学受験について考え始めていた頃、小中高と学んできてこのまま大学に進んでいいのか、大学受験そのものにすごく疑問を持つようになってしまったんです。そこでこれまでとはまったく違う環境の中に自分を置いて、一から考え、自分自身を見つめ直してみようとアルゼンチンへの1年間の留学を敢行しました。なぜアルゼンチンかというと、数ある留学プログラムの中で日本から一番遠い国だったから。でもアルゼンチンに留学したことで、とかく内向きだった自分の気持ちが、外に対してきちんと表現することができるようになり、あらゆる事柄に対してもより能動的に接することができるようになりました」と留学によって得た自らの変化について語ってくれました。

こうしたグローバルな環境の中で学生の次なるアクションを引き出すために、立命館大学では短期から長期、目的に合わせて多様な留学プランを用意していますが、大学生協においてもグローバル・コミュニケーション事業の一環としてさまざまな留学支援プログラムの提供を行っています。その一つが「Valencia International College Program」という海外でのインターンシップ・プログラムです。Valencia International College Programは、フロリダ州オーランドにある Valencia College で授業を受けながら、ウォルト・ディズニー・ワールドでキャストとして実習体験を行う約 5 カ月間の留学プログラムです。参加者はValencia Collegeの留学生としてビジネスマネジメントコース(授業)・アカデミックトレーニングコース(オンライン学習)・ リーダーシップ開発コース(オンライン学習)・アカデミックトレーニングプラクティカム(インターンシップ実習)の4つのコースを履修。世界中から集まる学生と共に学び、暮らし、働くことを通じ、グローバル人材に必要とされる知識、スキルおよびマインドを身に付けます。

このプログラムに参加した所川さんは、「このプログラムの存在を知ったのは中学3年生の時で、以来、いつかは私も参加するんだってずっと思っていました。もちろん、ディズニーが大好きだったというのもありますが(笑)。大学に入っていざ参加しようと思ったら新型コロナウイルスの感染拡大で実施見合わせ、ようやく再開されたところで絶対に行くしかないと応募しました。カナダへの留学経験があったので不安はありませんでしたが、いざ行ってみるとビジネスでお客さまとコミュニケーションをとるのは、ただ英語を話すのとは異なる責任とプレッシャーがあって、正直、最初は苦労の連続でしたね。でも、そこには必ず励ましてくれる仲間がいて、彼らとの出会いは一生の宝物と言っても過言ではありません」と貴重な留学体験を語ってくれました。

大学生協のインターンシップ留学「Valencia International College Program」に参加した立命館大学 所川 彩希さん(インターン中の写真)

大学生協のインターンシップ留学「Valencia International College Program」に参加した立命館大学 所川 彩希さん(インターン中の写真)

大学生協のインターンシップ留学「Valencia International College Program」に参加した立命館大学 所川 彩希さん(インターン中の写真)

グローバル・コミュニケーション事業の一層の充実を目指して。

「私自身は所属しているゼミを通じてさまざまな留学情報を得ているんですけど、これを1〜2年生の時からできたらと常々思っていました。3〜4年生になるとどうしても進路のこと、就活のこと、大学院試験の準備などがあって留学どころではありません。だから、もっと多様な局面で留学に関する情報をタイムリーに得られることが重要です」と鈴木(英)さん。所川さんも「私がいま思うのは、もう一度留学してみたい、ということです。私のように2回目、3回目の留学を望む人も少なからずいるのではないでしょうか」と言います。確かに1〜2年生から留学できるプログラムが豊富にあって、必要な時に情報を得ることができれば、そんな人たちのニーズにも柔軟に応えられるのかもしれません。「総合心理学部は大阪いばらきキャンパスに2016年に開設され、国際交流が軌道に乗る段階でコロナ禍になってしまい、多くのプログラムがそのまま頓挫してしまいました。ようやくそれが戻りつつあるわけですが、いまだに長期の交換留学についてはValencia International College Programくらいしかないというのが実情で、現在さまざまな国際交流の形を検討しています」と総合心理学部の事務室で国際・学生留学支援を担当する坂本さん。

大学生協でも留学プログラムの実施にあたっては、申し込みから渡航までの手続き時期案内および試験日程の設定、海外での危機管理に関連する情報提供・ガイダンス、渡航先から24時間日本語での緊急時電話相談サービス、留学先への日本語の話せるスタッフの常駐、緊急時の大学生協スタッフによる現地対応など、大学生協ならではのきめ細かなサポートを提供しています。立命館大学が「R2030」の中で目指すグローバル化への歩みを後押しし、互いに協力し合うことでさらなるシナジーを発揮していくためにも、大学生協はより一層グローバル・コミュニケーション事業の充実を図っていく必要があるのかもしれません。