全国大学生協連 新型コロナウイルス対策特設サイト #with コロナ Withコロナ キラリ人インタビュー

Withコロナ キラリ人インタビュー 
燕市 企画財政部 地域振興課 楡井 弘人 様・坂内 未央 様

インタビュイー

燕市 企画財政部 地域振興課
楡井 弘人 様

 

燕市 企画財政部 地域振興課
交流推進係 地域おこし協力隊
坂内 未央 様

聞き手

  • 矢間 裕大
    (全国大学生協連学生委員会 学生委員長)
  • 皆川 淳哉
    (全国大学生協連学生委員会)
  • 安井 大幸
    (全国大学生協連学生委員会)

【取り組みの概要】

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、新潟県外に住む燕市出身の学生で、緊急事態宣言により燕市への帰省を自粛している学生に対し、市内有志の方からのご厚意で、燕市産のコシヒカリ5キロと手作り布マスク1枚などをはじめとした応援物資を送りました。

取り組みのきっかけ

今回の学生支援の取り組みが学生支援で若者を中心にされているのが良いと思いました。市長さんの声もいれていましたが、その背景などのご紹介をお願いします。

今回の取り組みは燕市の事業主の方から、燕市への帰省を自粛している学生があまりにもかわいそうなのでお米を送ってあげたいという話を市役所にいただきました。すぐに提案くださった事業主の方に会いに行き、燕市ゆかりの物資を送ろうという話になりました。学生たちへの情報発信は、「東京つばめいと」でのネットワークを用いて少しずつ広げていこうと考えました。4月10日から受付を開始し、市の公式Twitterで情報を発信したのですが、すぐに2.4万のRTと、3万のいいねとなり、最終的な応募数は547件になりました。市長のメッセージも届けたいと事業主の方々が言ってくれたので、そのメッセージも同封しました。市が主導して行った事業に思われがちですが、発案・内容・お金も含め、事業主の方々を中心として多くの市民の皆さんと市が協力して取り組みました。

547件が最終だったのは僕も初耳でした。数値を見ると必要としている学生がこれだけいたということですね。

今回の取り組みの苦労やうれしかったこと

2つ目の質問で苦労や難しかったこと、色々なエピソードがあったと思いますが、詳しく教えてください。

「東京つばめいと」でのネットワークを用いるとはいえ、学生たちへ情報を届けることが一番苦労すると思っていましたが、ここはTwitterが解消してくれました。しかし、次に、応募数が急激に伸びたことで、対応が遅れるという問題が生じました。当初は、100件から200件程度の数を想定していたのですが、あっという間に200件を超え、お米が間に合わなくなり、多くの農家さんにお声がけをし、「うちは40袋いける」「うちなら100袋用意できる」ということで、なんとかお米を集めました。ちょうどゴールデンウィークで田植えと重なっていたこともあって、農家さんも忙しかったようですが、なんとか集めることができました。
また、当初から送りたいと思っていた布製のマスクの手配も苦労しました。市内にあるお母さんが1人でやっているような事業者さんにお願いしていたのですが、1日30個くらいしか作れないということがわかり、一気に200件の応募が来てしまったので、市の施設にみんなでミシンを持ち込み、近所に住んでいるミシンの上手なお母さんたちにも集まってもらって、4人、5人でマスクを作る体制を整え、密を避けながらみんなでマスクづくりを行いました。
うれしかったのは、発案してくれた事業主の方々、協力してくれる農家さんたち、マスク作りを快くひきうけてくださった近所のお母さんたちなど、多くの市民の皆さんが積極的に協力してくださったことです。学生たちが苦労しているから何かの助けになりたいという純粋な気持ちで多くの人たちが賛同してくれました。私たちも本当に純粋な気持ちで取り組むことができましたし、なかなかできない経験となりました。

私は学生とやりとりする中で、お米やラーメンをもらった御礼の言葉を何度も聞きました。これからはその感謝の気持ちを協力してくれた市民の皆さんに伝えていきたいです。

日頃のつながりから今回の取り組みが生まれました。

社長さんたちとは日常的なつながりや空気間があるのでしょうか?

燕市はものづくりの中小企業が多いまちです。事業主の方々が発案して、お金も集めてくれて、市の事業に活かすというようなことはよくあります。いい意味で行政を企業が使ってくれるというイメージです。他の自治体よりも企業と行政の距離感が近いという感覚ですかね。
2年前に燕市でのインターンシップをコーディネートする「産学協創スクエア」という施設ができました。中小企業の集合体である燕市全体が連携してインターンシップを引き受けています。この発案も事業主の方々からのものでした。今回の学生支援における企業と行政の関係性について、他の自治体の方々から褒められますが、燕市からするとよくある話です。いい取り組みであればすぐに企業と行政が連携し、進みます。このような下地が昔からあったからこそ、今回の取り組みにつながったと思います。

ここまでの話を聞いて、日頃からのつながりが大事だと思いました。さらに、事業主の皆さんたちが燕市のことを好きなんだなと思いました。コロナが落ち着きましたらぜひ行ってみたいですね。

一つお伺いしたいのは、社長さんたちだけで行わず、燕市(行政)へ話があがる理由を教えていただきたいです。

行政の力である、「市民に周知する力」を事業主に方々は理解していて、逆にお金が絡むとすぐに動けないことが行政の弱さだということも理解している。東京の若者を助ける際に、「つながりは行政」がやり、「金は俺らが出す」という感じで、お互いがお互いの強み弱みをわかっているのが大きいと思います。

日頃のつながり、関わりが大きいと聞いていて思いました。

坂内さんは、事業主の方々とたくさん連絡をとっていて、普段からとてもかわいがられています。普通だったら企業のトップと話しができるのは、役所の課長とか部長になると思われますが、燕市の場合、日常の付き合いから坂内さん一人で打ち合わせなんかをすることもあります。

事業主の方とSNSを使った交流もあるほど、皆さん気さくにいろんな話をしてくださいます。


インタビューの様子(写真)

支援物資を受け取った学生の反応

支援物資を受け取った学生からの反応を教えてください。

お手紙やメールをたくさんいただきました。本人からの御礼、親御さんからの御礼や、全然燕とゆかりがない方々から「TVで知って感激しました」とお手紙をいただきました。「人とのつながりの大切さを感じて元気づけられました」とか、「地元愛がさらに深まりました」という言葉をもらいました。「お米をありがとうございました」だけではなく、「燕市の良さに気づきました」とか、「こういう取り組みをしている自治体があることにうれしく思いました」とか、学生支援に取り組んでいる姿勢そのものに共感を得られていると思いました。純粋に学生を応援したいという気持ちから生まれたものだからと捉えています。

学生支援の物資を送った後に始めたオンラインランチの時間の中では、学生が、同じ寮に住んでいる他県出身の学生と一緒に背脂ラーメンを食べたという話を聞きました。このようにモノで人とつながることができているのもうれしいことですね。

私の妹も物資支援をしていただき、地元を思い出すことがたくさんあったそうです。さらに、私の妹のところに物資が届いたとき家族LINEが動きました。届いた物資の写真を送ってくれたり、実際にマスクつけた写真を送ったりしてつながりました。それから2日に1回は現状報告をしようということになり、些細な近況報告が今でも続いています。

モノを通じて人がつながるということもそうですが、燕市の魅力を繋げることがいいと思いました。都市で済むことが持続可能ではないと分かった中で、燕市のようなところが、地方活性化につながると思いました。

そのように言っていただき非常にうれしいです。これまで知らなかった自治体へメールで御礼を伝えるなんて、なかなか考えられないことだと思いますし、今回の取り組みで、初めて燕市と接点を持つ機会になった人たちも多いと思います。小手先だけではなくて、コスト的なことなどももちろん考えますが、困った人に何かをしてあげたいというシンプルな行動が多くの人々の共感を呼んだと思います。

全国の大学生へメッセージ

全国の大学生へメッセージをお願いします。

今回「燕市はいつも君たちを応援しているよ」ということを帰省自粛の学生たちに伝えましたが、これは、どの市町村も同じだと思います。現在の状況は、改めてふるさととつながれる機会でもあると思います。すべてのふるさとが新型コロナウイルスの中、みなさんを応援していると思います。何かあったらふるさとを思い出してもらいたいと思います。

私は燕市にUターンをして3年目になります。関東に住んでいた頃からまわりの人に燕市の話をするのが好きでした。みなさんにも、地元の「ここがいいな」があると思います。これを機に地元の魅力を再発見して、地元自慢をする学生が増えると良いなぁと思います。

若者が悪いという風潮もありますが、ふるさとが応援しているんだというのはとても心強いと思います。ちょっと前向きになったり、日本のいろんなところに住んでいる人の励ましになると思いました。人と人のつながりが対面ではなくても遠くても繋がれるということがわかりました。本日はありがとうございました。