全国大学生協連 新型コロナウイルス対策特設サイト #with コロナ Withコロナ キラリ人インタビュー 全国大学生協連 新型コロナウイルス対策特設サイト #with コロナ Withコロナ キラリ人インタビュー

Withコロナ キラリ人インタビュー 
保育士 斉藤 幸波さん & 北海道教育大学旭川校3年 細谷 里沙さん

取り組みの概要

学校の臨時休校が長引くなか、家庭で子どもと向き合う保護者の負担を少しでも軽くするために、情報サイト「“つながる”をたすける」が立ち上がりました。サイトでは、新聞紙や紙コップなどを使い、一工夫した遊びを伝えたり、市内で増えているテイクアウトの店を紹介しました。ほかにもLINEオープンチャットなどの機能を活用し、保護者同士の悩みを打ち明けて、励まし合う場も設けました。これらの取り組みを始めたのは、20代の保育士と大学生の二人。どんな想いからサイトが立ち上がったのか、想いや裏側を聞いてみましょう。
※サイト:https://peraichi.com/landing_pages/view/p021b (現在は公開終了しています。)

インタビュイー

子育て支援団体 よつばのクローバー

保育士 斉藤 幸波さん

北海道教育大学旭川校3年 細谷 里沙さん

聞き手

  • 矢間 裕大
    (全国大学生協連学生委員会 学生委員長)
  • 皆川 淳哉
    (全国大学生協連学生委員会)
  • 安井 大幸
    (全国大学生協連学生委員会)

お二人のご紹介をお願いいたします。

旭川市で保育士をしている斉藤幸波と申します。保育士とは別に、子育て支援の取り組みをしています。子供たちの遊び場を作っています。

現在北海道教育大学旭川校3年生の細谷里沙と申します。教育発達専攻の特別支援教育分野を専攻しています。

「子育て支援団体 よつばのクローバー」の日常的な活動やその目的について

この団体が、コロナ禍での子育て支援をテーマに様々な活動をされているのをインターネットニュースやFacebookで拝見しました。早速ですが、どのような経緯で取り組みをスタートしたのか教えていただければと思います。

保育士として幼稚園・保育園で働いている中で、仕事柄、「休日の遊び場が少ない」「どこで子どもと遊んだらいいか分からない」という声を日頃から聞くことがありました。そういった保護者のお話を聞くことがあったり、自分たちの中でも幼稚園・保育園で遊びたいものを思いついても、予算の関係や危険性などを考慮して大変ではないかということもあって、保育士としては若い世代が発信しても、幼稚園・保育園では通る立場ではなかったです。そこで、幼稚園・保育園という枠の外で、新しい遊びをやってしまえばいいのではということで有志を募って開始した取り組みが「子育て支援団体 よつばのクローバー」の取り組みです。とりあえずなんでもやってみようということで、少し大きな遊びをイメージして、家や幼稚園ではできない規模で、新聞紙で体育館中を埋めてみたり、水遊びするために水のある公園に水着で集まってもらったり、身体中に絵の具を付けることができるボディーペインティングの機会や、大学の体育館を借りて段ボールで家や迷路をつくったりする取り組みを年に4~5回程度やっています。その活動に加えて、たまにハロウィンで仮想したり、廃校を使ってキャンプをしてみたり、お泊り会を開催したりという活動もしています。また、月に1回子育てサロンを夜に開催しています。働くお母さんが増えてきて、お父さん・お母さんとも共働きの中で、平日日中の子育てサロンでは繋がれない家庭もあるのではないかと思い、月に1回程度子育てサロンを開催していました。今はコロナの影響でどの活動もできていません。

かなり大規模に活動をされていることが分かりました。それぞれの活動をつくる上で、子どもたち本人や保護者の方からお話しを聞くということを日常的にされている感じですか?

幼稚園や保育園という実践の場で働いているスタッフが多いので、保護者の方から様々な声を聞くことが多いです。その中でも、一番大事にしているのが、スタッフの中から、「これをやってみたい」という話が出てくることを大切にしています。例えば、ハロウィーンパーティーをするにしても、幼稚園・保育園ではできないほどに部屋一面を飾り付けして、『ミッケ!』という絵本みたいに、その中から何か面白いものを探し出せる部屋を作ってみたりしました。スタッフの中から出てきた「やってみたい」という願いを、スタッフが力をあわせていくことでできるのではないかと思っています。保護者や子どもたちのニーズを聞くということももちろん重要ですが、それ以上に「あんなこと、こんなこと、やってみたい」というスタッフの声を取り入れています。その中で、スタッフ側の自己実現をすごく考えています。

スタッフ側の自己実現という発想は面白いと思いました。その中で、スタッフの年齢層も若い方が多いと思いますが、「あれやりたい、これやりたい」という動機はどこから湧いてくるのでしょうか?

最初にもお話した通り、保育園・幼稚園で却下をされちゃう、押さえられちゃうということ経験は大きいと思います。普段やってみたいと思っていることも、予算の都合や、けがのリスクなどを懸念されてできていないという状況です。保育園・幼稚園の先生も、「こんな保育がしたい、こんな風に子どもと関わりたい」という願いを持っていても、全部が全部できないという状況がどこの園にもあるので、その背景が大きいように感じています。

特設サイト「“つながる”をたすける」を設置された背景や実際の取り組みの内容

そうした形で、様々なスタッフとともに、「子育て支援団体 よつばのクローバー」を運営されているのがわかりました。その中でも、今回は「“つながる”をたすける」という特設サイトを開設された点がとても印象的だと感じています。サイトも拝見させていただきましたが、この状況の中で悩んでる保護者のサポートをするための情報発信をしているのが印象的でした。取り組んだことと、その取り組みをした背景や実際に届いた声・実態などを教えてほしいと思います。

「“つながる”をたすける」の取り組みも、団体として動いたという風に捉えられているかもしれませんが、実際は私個人と細谷さんの2人で話している中で子の取り組みは生まれました。普段、保育園や幼稚園で関わる保護者の方や、僕らが作っているイベントに手伝ってくれたり、僕らが取り組む居場所づくりの活動にも参加してもらう保護者の方から、「お母さんたちが困っているよ」という声がSNS上などで聞くことになりました。僕も僕で、普段取り組んでいる活動をストップせざるを得ない状況があり、「何かできるかな?」と考えていました。その中で、オンラインで大きな活動が動き始めるという社会の動向が出てきており、僕たちサポ―トするさまざまな方の力になりたいと考えて始めました。「きっとこういうことで困っているんだろう」と考えて動くよりも、「実際、何に困っているの??」「何があったら助かるの??」ということを聞いてからスタートしました。その時に、今まで活用していた連絡ツールが活用することができるという意味から、この取り組みを広げるために、「よつばのクローバー」という枠組みを活用させていただいたという次第です。なので普段からかかわっていた保護者の方々は、直接聞いてみて、「外に出れないのがつらい」とか「人と話せないのがつらい」「ゲームばかりさせてしまって申し訳ない」「料理を作るのが大変」などといった保護者の声がたくさん寄せられました。その上で、どんなことが必要だろうかと考えて、「“つながる”をたすける」の取り組みは作られたものになっています。情報発信をしている特設サイトでは、4つの項目からなるサイトになっています。おうちででできる遊びの紹介や、料理をテイクアウトできるお店を取り上げることで楽をしてもらったり、コロナ禍への対応で動き出した団体の情報も届けるということもしていました。そして、一番力を入れたのは、「しんどいのはあなただけじゃないよ」ということが伝わってほしいという願いがありました。そこで様々な家庭での様子を少し取り上げて、「家ぐちゃぐちゃなんだ」「ゲームやらせてるんだ」という気づきを共有できる輪を作りたいということで、このようなサイトになっているという状況です。

実際の声から作った取り組みが素敵だと思いました。そして、ネットワークから声を集めるのが大事だと思いました。その声を集める際に工夫したことはありますか?

コロナウイルスの影響で生活がすごく大変な時期だと考えて、保護者の方に聞き取りを行いました。聞き取りでは、「どんなことに困っていますか?」「どんな不安がありますか」という質問をしましたが、それだけではなくコロナ禍によって「よかったことはありますか?」という項目も入れました。マイナスの状況は休校措置や緊急事態宣言の影響でもたくさん見られていますが、それ以外に、むしろこの時間でできたこと、例えば「子どもとゆっくり過ごせた」という声もあるのではと考えて、一緒に聞き取りをするように心がけていました。

その声を集めた中で「よかったことはありますか?」という問いに対して、ポジティブな反応もありましたか?

「この機会だからこういうことができました!」というメッセージとともに、保護者の方が子どもと一緒に作った作品を送ってくれたりしたこともありました。

困ったことだけではなく、良かったことも含めて、今の状況の全体像を把握することが大切だと思いました。

保護者同士の横のつながりを作ることで、励まし合う・支え合う取り組みへ

新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、たくさんの子どもの様子や保護者の様子を見てこられたと思いますが、その中で感じたことを教えてほしいと思います。また、この状況を踏まえて、今後どのような社会的支援が必要になるかという点についてもお聞かせいただければと思います。

コロナ禍の様子でいいなと感じたこととして、休日・平日関係なく、公園に集まる人がたくさん増えたことが挙げられます。北海道旭川市は、外出に際して基本的には車が必要となる地域で、地下鉄とかの密集対策というよりは、人との接触をなるべく減らしましょうという対策が呼び掛けられていた。その影響で、密集した遊び場ではなく、遊び場を求めて公園に行ったり、河川敷でランニングをされているご家族がたくさん見られて、ほのぼのする光景だと感じています。普段は閑散としている公園が、すごく遊ばれる場になったという点が印象的でした。“Stay Home”と言われる中で、手放しに喜べるわけではないですが、すごくいい光景だと感じています。

サイトの開設と同時に、オープンチャットも開始しました。オープンチャットには35名くらいが登録してくれて、6月に入ってもオープンチャットが続いている状態になっています。オープンチャットの中では、愚痴や虐的な投稿を掲載したり、「子どもとホットケーキを作ったよ」といった日常的なことを教えてくれる方もいます。その中でも、時々「もう無理」というLINEを送ってくださる匿名の親御さんもいらっしゃって、「このイライラを子どもにぶつけれないから、ずっとトイレに閉じこもっています。本当に泣きたいです。」という内容をポツンと投稿してくださった方がいました。その投稿に対して、他の保護者も大変な状況であるにもかかわらず、たくさんの方がその投稿者に向けて「大丈夫ですか?」「話聞きますよ!」という親身な返信を長文で一気に投稿してくださりました。「私もそうです!」といった共感や、「自分を責めちゃだめですよ」といった温かいメッセージが並んでいました。オープンチャットが、「大変だ」という本音をみんなが吐き出し、大変な想いを共有できる場所になったことで、保護者にとっては安心につながっていたのではないかと思います。

オープンチャットに寄せられた声は、本当にリアルな声だという印象を受けました。同じく子育てをしている保護者同士だからこそ励まし合うことができるのではないかと思いました。この話を踏まえて、旭川市だけではなく、「全国的にこうした社会的な支援が必要だ」と考えていることはありますでしょうか?

コロナウイルス対策は、住む地域によって状況が大きく違っていて、東京だと“Stay Home”と言われているが、旭川市は“Stay Home”に従って生活するのが必ずしも正しいかと言われたらそうではないと思います。旭川市の場合は、ストレスをためずに、しっかりと人と人との間隔をとった行動をして、遊びの場を子どもたちに確保することが重要だと思います。それぞれの地域のことを思って動いてくれている人たちに、行政が柔軟に寄り添う体制が整えばいいなと思います。

加えて、親御さんが孤立しないような体制が必要だと思います。具体的な政策は言えませんが、このサイトとオープンチャットの反応を見て思ったことは、親御さんの孤立が深刻だということです。子どもと過ごす時間が多く孤立感を感じる方もいるので、その孤立に対して何かしらの支援ができて、少しでも保護者の助けになったらなと思います。

どの地域でも共通して、孤立は生まれていそうですよね。新型コロナウイルスの影響で、限られたコミュニティの中で過ごしている方が増えている印象があるので、どうにかしてできることを考えたいところです。

先ほどの話で、孤立しない体制をつくるというお話や、オープンチャットの取り組みのお話がとてもいいなと感じました。自分だけでは解決できない問題や、医者に聞くほどじゃないけど困ったという話が多いとよく聞きます。こうした問題にオープンチャットの中で対応できているのは素敵だと感じます。お話の中で、「横のつながり」が大事という話がありますが、横のつながりを作る際に、注意している・大切にしていることがありましたら教えてください。

不安を煽るような情報共有をしないように意識をしていました。

どの情報が正しいか、間違っているのかという不安を煽りたくはないという想いが強かったです。とにかく「気持ちの共有」の場にしてほしいなという気持ちでした。「○○小学校が…している」という話よりも、「うちの家では…です」という話を共有する場にしたいなと感じていました。

オープンチャットの中でも、自分自身の実体験を赤裸々に話してくれる方は多かったですか。

驚くほど多かったです。正直私たちも、最初は少ないだろうな、知らない人の前で気持ちを吐き出せる人はスクないだろうなという風に考えていました。

匿名だからもしかすると赤裸々に語ってくれるかなという読みだったが、実際にやってみると、「子どもの顔も分かっちゃうよ」という写真が送られてきたり、「この名前で登録したらバレちゃうよ」という名前で登録して投稿する人もいました…(笑)

とにかく話したかったですという保護者の方が多く、続々とオープンチャットに投稿が届いて本当にびっくりしました。

日ごろから保護者の方の気持ちを聞いていたこともあって、「場の共有」という考え方がマッチしたのではないかと感じます。

お互いに悩みを共有できる場を作る取り組みがとてもいいと思いました。