《聴》「オーディオブックを聴いてみた」

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「耳」を使って読書するオーディオブック。
気になってはいるもののまだ使ったことのなかったいずみ委員が、今回初体験! 新たな発見はいかに?

 
いずみ委員が今回体験したのはオーディオブック配信サービスaudiobook.jp
15,000作品以上が聴き放題で楽しめる
  • 月額プラン 1330円/月
  • 年割プラン 833円/月(1年契約)
※初回14日間無料でお試しできます。
 

無限に広がる聴く読書の楽しみ

「読書」とは活字を目で追うものと思って生きてきた。それは太陽が東から昇るくらい当たり前のことであった。しかし、変革の時は訪れた。オーディオブック。存在自体は認識していたものの、私には縁がないものと思っていた。縁あっていずみ委員になり、そして、縁あってオーディオブックを体験させていただくことになった。
 いざ聴いてみようというとき、最近、明確にこれが初体験と意識しながら体験したことはあっただろうかと、ふと思った。ない。大変だ。はじめてだと意識したからには、はじめてにふさわしい体験を自分に提供しなくてはならない。
 どのような初体験にするか悩んでいた時、家族と山キャンプに行った。たき火をしているうちにあたりは寝静まり、火が消えた後は月明りのみ。
「今だ」と思った。今しかない。月の下に椅子を持ち出し、聴き始めたのは、江戸川乱歩の『人間椅子』。朗読はかの有名な声優、神谷浩史さんだ。
 私は小学生の時から江戸川乱歩が好きで、特に『人間椅子』は初めて読んだ時の衝撃が忘れられない。江戸川乱歩の魅力は、妖艶な美しい文章だ。そして、『人間椅子』は乱歩作品の中でも格別である。それが、神谷さんの声で耳に流れ込んでくるのだ。
夜更けの静かなキャンプ場で一人、妙に明るい月に照らされながら怪しく美しい小説を聴く。まるで世界に私と、この物語しか存在しないかのようだ。これがオーディオブックか……。
 キャンプの夜の体験後、未知なるものであったオーディオブックは私が愛してやまない「本」というものの楽しみ方を広げてくれる素晴らしいツールとなった。
 この体験に味を占めた私は、別の楽しみ方もしてみたくなった。私は本も好きだが、ジグゾーパズルも好きだ。普段はどちらかしかできないが、これはひょっとして、同時に二つの趣味を楽しめるのでは。当たりである。パズルとオーディオブックは同時に楽しめる。17時間におよぶオーディオブックもパズルと一緒ならあっという間。
 そういえば、本は一人でしか読めない。でもこれは二人で同時に読めるのでは。当たりである。車の中で運転している母と一緒に聴いてみた。笑いのツボが似ている親子は『成瀬は天下を取りにいく』を聴いて一緒に突っ込んだり爆笑したり、楽しい時間を共有できた。
わずか3か月の体験で、「二次元」だった読書は「三次元」に広がった。

(同志社大学1年生 山原和葉)

 
 

「聴く読書」体験記

 オーディオブックのサイトを見たとき、こんなところに知らない世界が広がっていたのか、と思った。小説やエッセイから実用書、小説も古典的名作から芥川賞、本屋大賞の受賞作、多種多様な本が「聴く」ことのできる形で存在していた。
 正直、言葉を耳だけで聞くのは、あまり得意なほうではない。これまでラジオを聴く習慣もなかったし、音楽を聴くときは歌詞を同時に目で読むことが多い。それでもオーディオブックのお試しに手を挙げたのは、「本といえば紙」「目で読むもの」という凝り固まった考え方は、言葉や物語を味わい楽しむことから誰かを排除してしまうものだ、と考えることが多くなったのと、文字を目で追う以外の読書のスタイルが、どんな可能性をひらいてくれるのか、身をもって経験したかったからだ。
 しかし予想以上に選択肢があって目移りする。どうしよう。気になっていた小説がたくさん。聴き放題のプランであることに感謝し、とりあえず気になるものを片っ端から再生していく。
 最初に選んだのは、さくらももこ『もものかんづめ』。初心者には章立てされたエッセイのほうが聴きやすいだろうか、と勝手に考えて選んだ。再生してみて驚いた。なんと、地の文を読み上げる声が、アニメの「ちびまる子ちゃん」のまる子なのである。ここであの声に出会えるとは、となんだかうれしい気持ちになる。アニメの声優さんが勢ぞろいで、さくらももこが少女時代に水虫に襲われた話が展開される。真剣にユーモラスな語り口という、さくらももこのエッセイの持ち味がよく生きていて、気付けば目で本を読んでいるときと同じように、情景を頭の中に思い浮かべながら聴くことができていた。
 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』は、本の形で読んだことがあり、比べてみようと思い聴いてみた。主人公の成瀬も友人の島崎も、わたしが読んでいたときに思い描いていた声とかなり一致していた。小説では登場人物ごとに読む声優さんが変わっていることも多く、そのぶん、紙上で読んでいるとき以上に、人物や発言が印象に残るような気がした。言葉と言葉の間が絶妙にとられていて、心地よい。
 若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』は、この形式でぜひ聴いてみたいと思った。やっぱり、自分の声で脳内再生するよりも「リアルな」東北弁が味わえる。主人公である桃子さんの切ない感情が、身に染みて感じられる。
とにかく作品数が多く充実していた。文章のリズムが自分に合う作品を見つけるのに、オーディオブックは役立つと思う。紙の本を愛する読書家にこそ、様々な本を耳で楽しむ面白さを一度試してみてほしいと感じた。

(京都大学大学院 齊藤ゆずか)

 

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