コメントカードの書き方
「好きこそ物の上手なれ」

特集「本が好き!2020 〜みんなで読書マラソン〜」記事一覧

 小林さくら
 

小林さくら Profile

 私は本が好きだ。好きだけれど、読む本が絵本やホラー小説に偏っている。単純に自分の好みだから仕方がないのだけれど、絵本やホラー小説じゃコメントは書きにくい。万人受けしそうな本でも読もうか、と一度は頭を過ったけれど、自分の読みたい本だってまだ全然読めてないというのに、どうしてわざわざ読書マラソンのためだけに読む本を変えねばならんのか!という結論に至り、読書マラソンには参加しないまま大学三年生になった。

 転機となったのは、2019年10月30日。そう、読書マラソン・コメント大賞応募締め切りの、実に一日前であった。私はその頃、ディズニーランドに行きたかった。どうしても行きたかった。けれど、財布はまるで羽のように軽く、銀行の口座の残高は三桁だった。そんな私の目に飛び込んできたのが、「読書マラソンコメント大賞作品募集!首都大独自賞の賞品は、講談社賞ディズニーランド ペアチケット!」の文字である。急いで締め切りを確認すると、なんと10月31日だった。——明日じゃないか。とりあえず、どの本でコメントを書くのか決めなければならない。審査員の人に評価されなければいけないから、私の好きな絵本やホラー小説は向いていないかもしれない。本屋大賞を受賞したものがいいのだろうか。それとも、大学生なのだから、専門書がいいのだろうか。色んな考えが頭を過った。結局、三通応募して、その内一通を自分の好きな絵本、二通を私の考える「万人受けしそうな本」にした。

 これで、どの本でコメントを書くのかは決まった。次は、どんな風にどんなコメントを書くのか、だ。とりあえず、自分の体験と絡めて、スマートフォンのメモに文字数は気にせずに、好きなだけ自分の書きたいことを書いてみた。コメントカードを見たことがある人であれば誰でも知っていると思うが、コメントカードに書ける文字の数は少ない。ここに、ほとんどの人が打ち当たるであろうと思われる壁がある。それが、文字数の壁だ。念のために首都大の生協のホームページを確認してみると、「コメントカードの文字数は150字程度でお願いします。」と書いてあった。たった150字! たった150字程度で、人の印象に残るようなコメントカードを書くのは至難の技ではないだろうか。

 最終的には、ここに掲載されているように、文字を小さく詰めて、何とか280字程度の文章(100万回生きたねこについて)をコメントカードに書き込んだ。これでも元の文章から相当な数の文字を削ったつもりだ。他二枚は、それ程文字数は多くせず、生協の指定した文字数に従う形となった。

 そんなこんなで、本の選択や文字数の壁に悩まされながらも何とかコメントカードは完成した。私が応募したものは「好きな本について好きなだけ書いたもの」と「万人受けしそうだと思った本について短くまとめて書いたもの」の二種類となった。結果的にどちらが金賞を受賞したのか、というと「好きな本について好きなだけ書いたもの」の方である。

 普段コメントカードを書いていないが、いきなり書けるだろうか、と不安に思う人には、一度スマートフォンのメモなどにコメントの全文を書くことをお勧めする。文字を減らすにしろ、増やすにしろ、変更が簡単にできるからだ。どうしても大幅に文章を短くしなければいけない場合は、その中でも特に自分が伝えたいことを抽出して繋ぎ合わせて文章にするのがいいかもしれない。

 長々と自分の体験とコメントカードについて書いてきたが、結局のところ、コメントカードを書く上で、一番大切なことは「好きな本について好きなだけ書く」ことだと思う。「好きこそ物の上手なれ」ということわざがあるが、「好き」という気持ちがあるからこそ、より魅力的で、人の印象に残るコメントカードが書けるのではないだろうか。  
 

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P r o f i l e
小林 さくら(こばやし・さくら)
首都大学東京(2020年4月より東京都立大学に改称)法学部3年。長野県出身。趣味はチェコやロシアの絵本を集めること。倒置法の変な大学名が変わることがとても嬉しい今日この頃。第15回全国読書マラソン・コメント大賞金賞受賞。

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