読書マラソン二十選! 162号
第15回 全国読書マラソン・コメント大賞 受賞作品

特集「本が好き!2020 〜みんなで読書マラソン〜」記事一覧


2019年6月1日~10月31日まで開催されたコメント大賞の応募数は1,872通。今年も個性豊かなコメントが多数寄せられました。今回の「読書マラソン二十選!」は12月6日の選考会で選ばれた金賞・銀賞・銅賞・アカデミック賞、そしてナイスランナー賞から11点のコメントをご紹介します。

主催:全国大学生活協同組合連合会
協力:朝日新聞社・出版文化産業振興財団(JPIC)


『100万回生きたねこ』
佐野洋子/講談社


 読み聞かせをする母の声が段々小さくなり、紙の上に水滴が落ちてきた。母はそれっきり、二度とこの絵本を読んではくれなかった。そんな思い出も相まって、私はこの絵本を悲劇的なものだと思っていた。しかし、掃除中に偶然見つけ、もう一度読んでみた時、私はこの絵本を悲劇だとは思わなかった。ねこは100万回生きて、心の底から大切だと思えるものを見つけることができた。死ぬことは悲しいことかもしれないけれど、本当に大切なものを見つけ、その隣で死ぬことができたら、どんなに幸せだろう。人間の一生は、このねこよりもはるかに短い。私はこのねこの様に、大切な誰かを見つけることができるだろうか。

(首都大学東京/桜子)


  • 『図書館の魔女 全4巻』
    高田大介/講談社文庫

     言葉を紡ぐ。それは音を組み合わせること。そしてそこには何処からか意味が与えられる。
     SNSの簡単な文字で、その場しのぎの言葉しか使わなくなった近頃、私はどこか虚しさを感じていた。そんな中で読んだこの物語には、言葉を知る、使う。そんな場面がちりばめられていた。言葉とは何か、伝えるとは何か。この本は、そんな言葉への意欲を掻き立ててくれる。

    (首都大学東京/りこぴん)


  • 『金閣寺』
    三島由紀夫/新潮文庫

     3時間半、一気読み。美しい日本語と世界観に魅了された。とはいえ、なぜ主人公は金閣を放火したのか、彼の考える美とは何だったのか。
     一読しただけでは分からなかった。
     繰り返し読んで、音読して、友人に意見を求めて……やっと分かったような気がするけれど、今私の中にある「答え」はあくまで現時点の仮説だ。数年後、もう一度この作品を読んだ時、この「答え」が変わる確信がある。

    (山口大学大学院/なっちゃん)


  • 『武道館』
    朝井リョウ/文春文庫

     私は部活に入っている。全然うまくない。試合には出られない。やめた方が良いのか、続けた方が良いのか、ずっと悩んでいた。そんな時に読んだこの本で、アイドルの少女たちも悩んでいた。そして彼女は「正しい選択なんてない。正しかった選択があるだけ」と言った。新たな道に進むにしろ、今の道を進むにしろ、それを正しかった選択にしようと、私は覚悟を決めた。

    (北海道大学/木口了一)


  • 『どんぐり民話館』
    星新一/新潮文庫

     本を読まなくなった大学生たちよ! この本から読みなさい。君たちは、字面を追うことが苦手なのだろう。この本はそんな君たちのための入門書となるだろう。そして落ち込んでいる君も、心を病んでいる君も、この本を読みなさい。そうすればきっと心の底から笑いだすだろう。どこから読んでもいいんだよ。読みやすいところから読むんだよ。人生だって同じ。つらいことなんか笑い飛ばしちまえ。

    (愛知教育大学/りんりん)


  • 『ペーパータウン』
    ジョン・グリーン〈金原瑞人=訳〉/岩波書店

     中学生のとき、親に反抗して怒られて、自分の小ささに悔しい思いをしていたときに、こんな風になりたいと憧れた女の子がマーゴだった。悪い子で、困った子だけど、「ぺらっぺらな人間に頭を押さえられて生きたって面白くないじゃん」って言われた気がした。人生に積極的である格好良さを見せてくれた本です。

    (広島大学/From boise)


  • 『読書について』
    小林秀雄/中央公論新社

     読書について、本を読んで習うなんて最高の皮肉だと思う。
     読み方も知らないやつが読んでもわからないじゃん。自分が読書できているか気になり読んでみた。
     やられた、自分の読み方はもっと成長できた。そして誰にでもわかるよう書いてあった。だからこの本を読んで、読書について考えれば今までの数倍、本から学べるようになります。ね? 平凡な助言でしょう?

    (首都大学東京/とんでも太郎)


  • 『平和は「退屈」ですか——元ひめゆり学徒と若者たちの五〇〇日』
    下嶋哲朗/岩波現代文庫

     長崎という地に暮らしていると、自然と「長崎の考える平和」が全てであり、あたりまえだと感じてしまっているのだと、この本を読んで感じた。戦争を伝えてくださる方々の存在は永遠ではないということ。そして、伝える側と聴き受け止める側が同じ志を持つことで初めて、平和が退屈でなくなり、私たちが考えるべき共通のテーマになると感じた。

    (長崎純心大学/2019.7.22)


  • 『天皇制ってなんだろう?——あなたと考えたい民主主義からみた天皇制
    宇都宮健児/平凡社

     今まで、歴史を学ぶ意味がよく分からなかった。でも、この本に出会い、その本当の理由が分かった気がした。もう二度と、支配者層によってねじ曲げられた歴史をうのみにしないように。自分で「これは違う」と判断できる人になるために。その力は、民主主義の主人公になるため、必要なものだろう。

    (愛知教育大学/ねむ)

ナイスランナー賞は、総数200点が選ばれました。今回はその中から11点をご紹介します。


  • 『下流志向』
    内田樹/講談社文庫

     現代の子どもたちの学力低下は子ども自身の怠惰や教師の指導力の低下だけでなく、子どもたちが学びから逃走していることが起因である。学んで何の役に立つのか?「学びからの逃走」は「教育を受ける権利」を放棄した子どもたちの様子を示す。この「学びからの逃走」の現状を解き明かしていく。また、「労働からの逃走」は「学びからの逃走」と同じ道筋を通っている。自己決定から生じる「労働からの逃走」。転職の繰り返しや安価な賃金から形成されるニート。現代の抱える問題に対して語られていく。「学ぶことの意味を知らない人間は、労働することの意味もわからない」。読み返せば読み返すほど新しい発見のある教育論が述べられた一冊。

    (北海道教育大学/匿名)


  • 『死にがいを求めて生きているの』
    朝井リョウ/中央公論新社

     私たち大学生がしばしば考える無視できない現実が、未来。考えていると連鎖反応的に思い浮かべてしまうのが、目的。そこで私たちが立ち止まり目を向ける言葉が、生きがい。多くのものに容易に手が届く今の時代、自分自身について考える時間ができてしまった私たち。選択する余地ができてしまった。「あなたのしたいことをすればいい」と言われてしまった、何かにならないといけない私たち。平成生まれの私たちが、この二人を「物語」の中の「他人」だと素通りすることができるだろうか。

    (法政大学/シイラ)


  • 『わたしを離さないで』
    カズオ・イシグロ〈土屋政雄=訳〉/ハヤカワepi文庫

    「アンパンマンは何のために生まれたか知っているから幸せなんだ」とロールパンナちゃんは言った。この物語の登場人物たちも自分が何のために生まれたか知っている。彼女たちは幸せ? 幸せになるためには、何のために生まれたのかを、自分で見つける必要があるのかなと思った。

    (東京外国語大学/千島)


  • 『あなたの人生の物語』
    テッド・チャン〈浅倉久志=他訳〉/ハヤカワepi文庫

     皆が訳知り顔で生きている「自明」な「この世界」、しかしそれは数ある可能性のうちの一つに過ぎない。何かちょっとした違いが魔法の体系・天使の顕現を「自明」とする「その世界」を導き出したかも分からない。「何をばかな」と思うなら、しかしではなぜ、君は「この世界」を「自明」と信じるのか。テッド・チャンを読んだ私からすれば、そんな認識をこそ「何をばかな」と言わずにはいられない。SFを「科学的創作」と思い込む君は、「自明」な「この世界」から、早く「こちら」に来るといい。

    (慶應義塾大学/Mike)


  • 『短編少年』
    伊坂幸太郎・あさのあつこ・佐川光晴ほか/集英社文庫

     小学校教師を目指している。来年の今頃にはもう子どもたちの前に教師として立っているかもしれない。こんな教師にはなりたくないが、こんな子どもがクラスにいたら、最高に面白い。子どもの前に立つ教師といえども完璧な人間などいない。子どもから人生にとって大事なことを学ぶことだってあるのかもしれない。いつまでも謙虚でいたいと思った。

    (横浜国立大学/うらら)


  • 『ショートショートの缶詰』
    田丸雅智/キノブックス

     ページをめくった瞬間、私は透明な魚になった。物語たちを泳ぎ回る魚になった。この本には「海」をテーマにした物語が2つある。この2つでは特に自由に遊泳することができた。人々は海で潮干狩りをしたり釣りをしたり、泳いだり……。私はそんな人々と一緒にいろんな世界を旅したのだ。

    (愛媛大学/ゆいむ)


  • 『ストーリー・セラー』
    有川浩/幻冬舎文庫

     この物語が自分と重なることはほとんどないのに、どうしてこんなにも心が震えるのだろう。『ストーリー・セラー』は小説家の妻とその夫の物語だ。SideAとsideBでどちらも愛する人の死が描かれている。しかし、中心にあるのは死や命ではなく愛だ。命よりも重く、深く、甘く、温かい愛の物語だと私は思う。そして、1人でも幸せになれる現代に人を愛する強さを教えてくれる。命より重い愛の物語をあなたにも読んでほしい。

    (東北学院大学/クマ)


  • 『ライ麦畑でつかまえて』
    J.D.サリンジャー〈野崎孝=訳〉/白水Uブックス

    「永遠の青春小説」の帯に惹かれて手に取った、いつか読まねばと思っていた名作。正直何度も挫折しかけた。主人公ホールデンは本当にどうしようもない奴で、おしゃべりなくせに(物語は彼の語りで紡がれる)ひん曲がって、まるで本心を見せようとしない。まるで…まるで反抗期真っ盛りの頃の自分を見ているようだ。「もうムリ……」身も、心も、ズタズタになりながらページをめくり続けた者だけに、救いが訪れる。雷に打たれたようだった。これは紛れもなく永遠の青春小説である。この本を開けば、孤独にあえいだあの頃の自分に出会えるはずだ。

    (京都大学/らいなす)


  • 『青くて痛くて脆い』
    住野よる/角川書店

     今まで読んだことのないジャンルだった。人はきっと、自分が当たり前で、ちゃんとしている、と思っている。私もそうだと思う。「あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。」この一文は考えさせられるし、心に留めておこうと思った。

    (札幌学院大学/あおねこ。)


  • 『疾走 上・下』
    重松清/角川文庫

     小学生の時、マラソン大会が大嫌いだった。どんなに頑張っても最初から最後までずっとビリ。周りで応援している同級生の女子にも、友達のお母さんにも、交通整理のおばちゃんにも、みんなにバカにされている気分だった。そんなひねくれた考えが変わった。シュウジは家庭が崩壊しても、学校でいじめに遭っても、走ることを止めなかった。体と心がボロボロになっても走り続けるシュウジに私は心からエールを送った。「バカにしてるだろ?」とシュウジは怒るだろうか。それでもいい。生臭いほどの現実に屈せず、孤高を目指した少年の疾走をいつまでも見ていたかった。

    (名古屋大学/N.Y.)


  • 『あしながおじさん』
    ジーン・ウェブスター〈岩本正恵=訳〉/新潮文庫

     孤児院出の文才ある少女がそれまでまったく縁のなかった世界へ導かれるシンデレラストーリー。中学生のときは最後に待ち受けるハッピーエンドに心躍ったが、大学生になり読み返すと180度違う印象を受けた。“あしながおじさん”宛てに書かねばならない近況報告。度重なる行動規制……。果たして主人公が手にした「愛」は本当に彼女が選んだものなのか? 孤児院育ちだからこそどこにも帰属しない主人公目線でつづられる手紙、その“余白”から様々なことを邪推してしまう(笑)。“恋愛”って何だろう。読後は誰かと語り合いたくなる本だ。

    (首都大学東京/とはずがたり)


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