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『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』

関連書籍紹介

原田まりる
『ニーチェが京都にやってきて
17歳の私に哲学のこと
教えてくれた。』

ダイヤモンド社/
定価1,540円(税込)

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 哲学の本は学生時代に読んでおくと良い。ということで、いざ大学図書館にある哲学書を手に取ってみるものの、ちょっと難しくて何を言っているのか分からない……。皆さんもこういう経験をしたことがあるのではないでしょうか。そういう方におすすめなのがこの本! 京都に住む女子高生が男子大学生に扮したニーチェと出会い、“哲学することとは何か”を学んでいくというちょっと変わったストーリー。その中でも個人的に印象深かったのは、ガールズバー経営者に扮したサルトルが放った言葉「人は自由の刑にさらされている」。少しギョッとするような言葉です。たしかに現代の私たちは常に自由という言葉と隣り合わせで生きています。職業選択の自由、どこに居住してもよい自由、好きなものを食べられる自由などなど。彼曰く、一見プラスのように見えるその「自由」も自分が社会に参加している限り、「責任」が伴ってしまうのです。たしかに、選択肢という自由を与えられても大なり小なり決断する時には、やはりプレッシャーを感じてしまうもの。なぜならその決断を下したことで自分ではなく、他人にも影響を及ぼしてしまうかもしれないからです。彼はそれを「自由の刑」と表しているのです。私の場合は大学生になった時に高校の「制服」という文化に慣れていたせいか、自由な服装をして良い、ということに苦しめられた思い出があります。あとは、レストランに行った時も眉間にシワを寄せてどの料理にするか迷ってしまうことも日常茶飯事ですね。このように一見難しく思っていた哲学も私たちの生活と深く絡み合っているのです。「哲学とは疑うことである」という意見もありますね。「たくさんの物に囲まれているのに、なんでここまで心が窮屈なの?」「周りの人と意見が合わないのは自分がちょっと変わった人間だから?」などなど、生きていく上で直面するこんな些細なことでも全て言語化してくれているものが哲学であると考えています。先人の哲学者のおかげで人生のヒントのようなものを見出せるのではないでしょうか。この本ではニーチェの「祝福できないならば呪うことを学べ」、ショーペンハウアーの「富は海水に似ている。飲めば飲むほど喉が渇くのだ」というエッジの効いた言葉も解説しています。自分の生活を振り返って「これはどうして○○なんだろう……」と思う点が一つでもあれば、あなたも哲学書にヒントを求めてみては!

(慶應義塾大学3年 戸松立希)

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