▼特集「本とともにキャンパスライフを」記事一覧

レギュラー企画『読書のいずみ』読者スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
京都大学大学院 徳岡 柚月
12月 犬を偲ぶ日

12月も半ば。もうすぐ今年も終わる。いろいろ将来のことなど考えることもあるけれど、それもそれとて、お部屋でぬくぬく本を読む時間も大切。吐く息が白かったりそうでもなかったり、こういう気候の時は、ゆったり思考の底で泳げるような本が読みたくなる、というわけで吉田篤弘さんの本を読む。『
天使も怪物も眠る夜』(中公文庫)、タイトルからすでに最高、空想が広がる。吉田さんの、ファンタジーのような、でもすごく現実みたいな、ここのようでここじゃない感じが漂う文章が大好きなのである。本の中の、みんなが不眠症で、夜眠れなくて、おもしろくない小説が所望される世界って、しんどいんだろうけどちょっと行ってみたい。夜、それぞれの場所で、みんな本を読んでるって素敵じゃない?
1月 白衣と緋袴
新年明けましておめでとうございます。大晦日は大学近くのお寺で除夜の鐘をついたし、新年はかの単位取得を祈願した者は必ず落とすことで有名な(by 森見登美彦『恋文の技術』ポプラ社)吉田神社に参拝したし、完璧ですね。さて、去年からちまちま読み進めている『
ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)、近々友達とFILM REDを観に行く約束をしたし、いっぱい読んどこ。今アラバスタ編なんだよなぁ。敵のクロコダイルがすごく強いんだけど、「幼馴染み同士を出会わせちゃったら、ひょっとして絆パワー発動して俺負けちゃうのでは!?」とビクビクしてるのが、少女漫画のヒロインみたいな発想でかわいいって友達が言ってたの、好きだった。目の付け所が違う。そういう楽しい発想、私もまねしよう。
1月 海辺の風に吹かれる

今回の『読書のいずみ』は「地元の本紹介」があるということで。いそいそ「神戸 本」と検索してみる。と、村上春樹さんの『
風の歌を聴け』(講談社)が出てきた。そうなんだ、神戸が舞台なんだ、うれしい。実は村上春樹さん、読みたいなーと思いつつまだ読めていない。この機に読もう!
あ、すき。冒頭の一文ですでに。なんだろう、この空気感。すごく澄んでて、読むたび息をするたび、スッとするような。でも見える風景はどこか霞がかかっていて、レースカーテン越しに差し込む光を彷彿とさせる。気持ちいい。それに、行間が語りかけてくる。語られていない余白が、書かれていることと同じか、それ以上に強く、柔らかく何かを伝えてくれる。いつまでも浸っていたくて、また、読む。
お茶の水女子大学4年生 川柳 琴美
焦りの募る11月中旬

卒論の提出締切まで、残り1ヵ月弱。一日中パソコンに向かっていると、目を閉じても研究のあれこれが頭の中を忙しなく走り回る。就寝前の読書タイムは、卒論という迷宮から抜け出すための一種の儀式だ。
PCの電源を落としてベッドに滑り込み、『
そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文春文庫)を開く。以前、親友の家に遊びに行った時にもらった本だ。森宮さんの料理に、寝る前だというのにお腹の虫がなりそうになる。人と人を繋ぐピアノに、最近触れていない鍵盤への気持ちが膨らむ。そして、多様な家族や親子関係に、読み終わったら感想を聞かせてほしいと言った親友の顔が浮かぶ。彼女と話すのが楽しみだ。
追い詰められる12月
締切まで1ヵ月を切った。寮の自室で朝から深夜まで卒論漬け。悲しいかな、最近は小説を読む余裕もなくなった。推しの作家さんは、締切が迫ると出版社の執筆室に「缶詰」するのが恒例だという。一流作家の執筆になぞらえるのはおこがましいが、図らずも「缶詰」を疑似体験している気分。
私の卒論テーマは、「彼もの」。少女漫画などで定番の、好きな人に手編みのマフラーやセーターを贈るという、あれである。既製品が普及した現代においても、人はなぜ手づくりをし続けるのか。子どもの通園バッグに手づくり感が求められ、手芸ができると女子力が高いのはなぜなのか。手編みセーターは、なぜ「重い」のか。
そんな疑問から始まったこの研究。先行研究や資料として出会う本たちが面白い!
特に『
絵を見て編むギャルのセーター』(津川良=デザイン、秋月志穂=え/日本ヴォーグ社)など、少女漫画形式の編物書はいろいろな意味で衝撃的だった。しかし、国会図書館に行かないと閲覧できないのはつらい……。
解放の年末年始
お、おわった〜!! 血と汗と涙の結晶である卒論を提出した。「缶詰」から脱出すべく、すぐに実家に帰省する。ああ、もう文字を見るのもイヤだ。帰省後しばらくは無気力状態だったが、美味しいものを食べて惰眠を貪るうちに元気が戻ってきた。さて手元には、大好きな八咫烏シリーズの最新短編を収録した『
オール讀物』(文藝春秋)、長いこと積読していた『
Schoolgirl』(九段理江/文藝春秋)、そして、いずみ委員の齊藤さん編著の文芸集『
木天蓼』。さあ、ご褒美タイムを満喫しよう。
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