「Campus Life」vol.67

「誰一人取り残さない」

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

コロナ禍をめぐって7月に実施した学生アンケートが注目された。昨秋の学生生活実態調査に続いて、7月のアンケートの結果も多くの全国紙・地方紙が報じることになった。大学生協は学生の実態についてリアルに情報を把握し、社会に提供する役割を果たしているわけである。今回は自由記述欄に記載された学生の声も公表されたことから、まさにリアルな状況が伝わってくる。がんばる学生の皆さんに改めて応援のエールを送る次第である。個人のがんばりだけでは、耐え切れないケースもある。的確に情報を収集し、手を差し伸べる態勢の充実も求められている。

誰一人取り残さない。アンケートの結果を読み進むうちに頭に浮かんだのがこのフレーズ。SDGsの公式文書に謳われた文章であり、基本理念として引用されることも多い。ただし、通常は途上国の貧困層を想定した表現として理解されている。これはSDGsが2000年に策定された国連ミレニアム開発目標、すなわちMDGsを引き継いでいることによる。MDGsは基本的に開発途上国を対象としており、貧困と飢餓の克服を目標として掲げていた。けれどもコロナ禍のもとでは、先進国においても、この基本理念を自分たち自身の問題として捉えることが大切である。大学においても直接・間接に厳しい状況に置かれた仲間が存在する。目の前のローカルなコミュニティの状況に真摯に向き合うことで、地球社会のグローバルな課題への認識を新たにする面もあるに違いない。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

「Campus Life vol.67 コロナでかわった大学生活、学生それぞれの道」に寄せて

全国大学生協連 学生委員会
2021年度全国学生委員
林 優樹 さん

対面で講義を受け、食堂で友達と談笑しながらご飯を食べ、放課後は課外活動等に打ち込むというコロナ禍以前の大学生活と比べると、大学生活は大きく変わりました。しかし、withコロナで生活をしている1、2年生にとってはこの生活はいたって普通であり、この環境の中でもできることからやっているのだ、特別だとは思わないという声が2021年7月に弊会が実施した「届けよう!コロナ禍の大学生活アンケート」で寄せられました。学生を支える側と大学生活を送る側で、少しの認識の差(ズレ)が現れています。ズレが表れている一つが、オンライン授業です。オンライン授業と対面授業どちらかを学生が選び、好きな形で出席をするという講義の際に、教室には誰も来ず、全員がオンラインで出席をしたという投稿をSNSで拝見しました。Leader's Voice(P.5)にもあるように、学生は、自分の生活にフィットした「新しい学び」を求めているのであり、大学がどのような対応をしていくか、姿勢やありかたが学生側から問われています。一方1、2年生が、かつて想像していた大学生活と、かけ離れたものになっていることは事実です。Closeup Data(P.1)に「求めているのは当たり前のコミュニケーション」とあるように、話す場を意識的に作らないと、会話がしづらいようになりました。Leader's Voice(P.3)にも「大学とは『コミュニケーションを図るための場所』であり、かけがえのない時間を過ごす場所なのだ」とあるように、日常生活で友達と話す中で共感が生まれ、共感が自分の生活を良くするための行動へと繋がり、行動が少しの成功体験になる、という経験が少なくなっています。コロナで仕方なく道を変えた・・・、ではなく、コロナ禍でも自分が進むべき道にむかうことができた。前向きに人生を考えられる学生を増やすためにも、この大学に入学してよかった、と学生が思えるようなキャンパスライフを想像し、大学と大学生協、そして地域と連携をしながら、学生の社会体験を育んでいくことが、一層求められています。

全国大学生協連 学生委員会 
2021年度全国学生委員 林 優樹


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