コロナ禍の大学生活リポート

新型コロナから得たもの、生かすべきもの~早稲田大学応援部の2年間~

愛校心。いうまでもなく、自分の出身校や在学している学校をいとしく思う心のことです。誰しも、少しくらいは持っているかもしれません。しかし、現代において、どれだけの人がここまでの思いを抱いているでしょう。

今回は、そんな愛校心ほとばしる早稲田大学応援部のお二人の、コロナ禍における2年間の大学生活、応援部の活動、そして就職活動についてお話を伺うとともに、その事態をどう乗り越え、明日へ進もうとしているのかをリポートしました。

CL TOPICS

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想定外の事態に翻弄された2年間の大学生活

東京六大学野球の中心地と言えば明治神宮野球場。毎年、春と秋にリーグ戦が開催され、ライバルたちの熱い戦いと応援合戦が行われます。2020年もきっと同じように快音と歓声が球場にこだまするはず、でした。早稲田大学応援部の主将を務める薗田将直さんも、そして同じく応援部チアリーダーズの新人監督を務める土橋万里絵さんもそう思っていました。新型コロナウイルス感染症。この年の春、その感染拡大がわが国でも本格的に始まってしまったのです。

薗田:まさに、想定外のことが起こったという感じでしたね。それでも野球部の応援はまだましだったんですよ。まったくの無観客というわけではなく、人数制限のある有観客で、しかもリーダー・チアリーダーズ・吹奏楽団の3パートがそろって応援できる唯一の機会を得ることができました。

土橋:さらに追い打ちをかけたのは、アメリカンフットボール部やラクロス部の試合が全くの無観客となり、応援にすら参加できなくなってしまったことでした。

大学生活にも大きな変化が訪れます。授業のほとんどがオンラインとなり、毎日の部活動そのものが制限されるという事態に陥ってしまったのです。

大好きな早稲田大学で、もっと自分を輝かせたい

早稲田大学応援部は、リーダー・チアリーダーズ・吹奏楽団の3パートからなり、それぞれに日々の活動を行っています。リーダーは、中心となって部員をけん引し、応援の際の要となります。チアリーダーズは、ダンスやスタンツ(組体操)によって、応援やステージを華やかに彩ります。吹奏楽団は、音楽で応援の場を高揚させると共に、演奏やマーチングドリルといったステージ活動を行います。普段の練習はパートごとに行われますが、応援、合宿、ステージといった活動は3パート合同で行われるといいます。

薗田:高校時代は野球をやっていました。強い学校だったので残念ながらレギュラーにはなれず、スタンドから応援することが多かったんです。ならば、大学では本格的に応援をする側になってやろうと。ここで一声ほしいだろうな、というところで熱を入れるなど、野球での経験を生かした応援が自分の持ち味でもあります。

土橋:早稲田大学は憧れの大学でもあって、そこの応援部に所属できれば、早稲田大学のことをもっと好きになれると思ったんです。応援部こそが、自分が輝ける場所、貢献できる場所だと。

そんな部活動に対して、大学側から4~7月までは完全に活動禁止の通達が出され、その後活動のためのガイドラインが示されることになってしまいました。

試行錯誤を繰り返しながら、一人一人の自主性を引き出す

当初は完全自粛でしたが、現在は徐々に段階的な緩和がなされています。複数サークルでの練習試合や大会の参加、他大学との討論会の活動以外の、サークル単体のみで行う活動であること。事業者向けの「東京都感染拡大防止ガイドライン」(東京都)、「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」(東京都)等を参考に、活動の内容を踏まえて、適切な感染予防策の実施を徹底することなどが求められています。こうした中、部としての活動をいかに継続していくかについては、やはり大きな葛藤があったようです。

薗田:本来忙しい部なので、新人は何も考えることなく与えられた指示をこなしていればよかったんです。しかし、今は、それがない。そこで考えたのは、部員一人ひとりの自主性をいかに引き出すか、ということでした。

部活動の制限が出されて困ったのは1年生や2年生ばかりでなく、指示を出す側の上級生にとっても同じ。ただ、試行錯誤を重ねていくうちにさまざまな取り組みを自ら行うようになったといいます。

土橋:コーチが作ったプログラムに沿って、週1回、Zoomでの部活動を実施。皆がオンラインでつながって、ストレッチや振り付けなどさまざまなメニューをこなしていきました。

ただ、本当の応援の醍醐味だいごみみたいなものを今の1年生や2年生は体感することができずにいます。その辺がやっぱりかわいそうなんですよね。

コロナ禍を経験したからこその新しい応援部のカタチ

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大という大きな障害が、新しいチャレンジや取り組みを生み出すきっかけにもなったといいます。そもそも応援部の活動資金は、早稲田大学稲門会のOB、OGの方々からの寄付やイベント等でのパフォーマンス活動で賄われていました。

土橋:コロナ禍でそれが大幅に減ってしまい、その窮地を脱するために始めたのがYouTubeの開設でした。今後は、YouTubeを収益化して活動費に充てることもありか、と。

かけがえのない2 年間の大学生活を新型コロナウイルスに翻弄された後輩たちに対しては

薗田:今回のような事態はこれからも起こる可能性があります。だからこそ、後輩たちには今、この瞬間にこだわる気持ちをきちんと持ってほしい、と思います。与えられた機会を一つ一つ大切にすることが基本です。さらに言えば、今回のような出来事をむしろチャンスだと捉えてほしいです。80年に及ぶ応援部の伝統はもちろん大切ですけれども、応援という求められているのかいないのか分からないことを続けていく上では、時代に即した発想が必要です。今回リセットされた部分をもう1回、従来のカタチではなくて、再構築すべくフラットに考えられることが重要なのではないでしょうか。

確かに新型コロナウイルスによるパンデミックは、大学生活に大きな弊害をもたらしましたが、学生たちはすでに明日を見据えた新たなスタートを切っているようです。

profile

[早稲田大学応援部]
主将 薗田 将直さん(法学部4年)

人の営みの根本にある法を学ぶことで、自らの人間力を高めようと法学部を選んだ薗田さん。既に航海士として海運会社への内定を得ており、日本と世界との懸け橋となるべく準備中。

[早稲田大学応援部]チアリーダーズ
新人監督 土橋 万里絵さん(商学部4年)

地方が持っている魅力を世界に発信したいと、地元の金融機関への就職を決めた土橋さん。身に付けたマーケティングの知識を武器にグローカルを実践していきたいとのこと。