CL COLUMN
百のご縁コーナー  龍谷大学 障がい学生支援室

リアルな交流が減った学生生活に、互いに助けられたり、助けたりの場を創る。
この経験が気づきや人間としての成長につながっていく。

「テレビのニュースやSNSでは、若者がコロナ禍にも関わらず、サークルや飲み会を楽しみ、感染を拡大させているという印象操作ばかりが強調されている。苦しんでいる若者もいるのに、全部ひっくるめて『若者』という大きな主語で語られ、大学生のリアルな生活やそこでの思いは報道されない。おとなも社会もわかっていない」。

これは、新型コロナウイルス感染拡大によるコロナ禍の影響を多大に受けた一人の学生の声です。影響の大小や状況の違いこそあれ、こうした学生が少なからずいることは疑いようのない事実と言えます。学内の調査によれば、アルバイト制限や家庭の経済状況の悪化などを背景に、一人暮らしの学生の約1〜2割が、食費を削るなど生活に困窮している実態が浮き彫りになりました。

龍谷大学の障がい学生支援室は、大学生活における不安や困りごと等の相談を受け付け、学生のニーズを把握し、支援を実施しています。特にコロナ禍においては、学生同士の交流が減少したことにより、ちょっとした悩みごとや困りごとを気軽に友達に相談することができず、一人で抱え込み過ぎて追い詰められ、支援室を訪れる学生が後を絶ちません。

そんな学生達への支援の一環として、龍谷大学生協と龍谷大学の共催で実施した「百縁夕食」(学生に100円で栄養バランスの良い夕食を提供する取組)において、トイレットペーパーなどの日用品やハーブの苗等を配布する「百のご縁コーナー」を運営しました。開催スタッフは障がいがあるなしにかかわらず、障がい学生支援室に相談に来ていた学生たちで、「仲間と言葉を交わせることがうれしい」「誰かの助けになっていることが実感できた」「人とコミュニケートすることの大切さを改めて知った」「コロナで大変な時期だけれど、前を向いて頑張っている人たちがいることを知り、自分も何かに取り組みたいと思った」といった言葉が聞かれるなど、学生と共に学生生活支援に取り組むことは、学生たちの視野を広げ、学生の心に喜びや気付きを与えました。互いに助けられたり、助けたりすることで、一人一人の気づきや成長につながっていく。この経験が困難を乗り越えるための一歩になれば、と思っています。


百縁夕食(日用品配布)の会場風景


久しぶりの交流に思わず笑顔

龍谷大学障がい学生支援室
支援コーディネーター
瀧本美子さん

障がい学生支援室より

「一人ひとりの生命の平等」、「障がいという個性、多様性」への理解を促し、「互いにリスペクトできる友」に出会う大学環境づくりを模索する。学生の相談は、授業や学生生活、就職活動に関する悩みごとから始まります。しかし繰り返し話をするうちに、他者とつながること、理解し合うことの難しさや、そこへの苦しみが語られるようになります。特に「障がいを『違い』の一つとして、当然のこととして受けとめてくれる友、対等な関係でつき合える友、心を許せる友に出会いたい」、「一緒にご飯を食べたり、たわいもないおしゃべりができる友達が欲しい」といった友人、仲間を求める気持ちを多くの学生が持っています。そうしたことからも、障がいのある学生を含む全ての学生が、自分とは違う「他者」に出会い、「自分」を伝え、「他者と自分」について考え、共に「自分たちが抱える課題」に、そして「大学というコミュニティーの課題」に向き合っていくことのできるインクルーシブな教育環境を整備していくことの必要性を感じています。自分とは違う「他者」に出会うことは、当然、摩擦や葛藤を生じることとなります。インクルーシブな教育環境とは、摩擦や葛藤を生まない環境ではなく、それらを大学という教育の場で安心して経験する中で、人間は一人ひとりちがっていること、しかし同じ生命をもち共に生きている信頼し得る存在であることを実感し、より良い社会を創る主体として成長を促す教育環境だと考え、日々の実践を模索しています。

(引用):龍谷大学「共生」のキャンパスビジョン(概要版)

「百縁夕食で頂いたバジルの芽が、今や花をつけるほどにまで成長しました。私は、このバジルのおかげで、日々幸せを感じることが出来ています。」(参加学生より)