Trend Focus
生成AIの適切な活用で豊かに広がる学びの世界

Trend Focus 生成AIの適切な活用で豊かに広がる学びの世界 ~大学での授業の楽しみ方~Trend Focus 生成AIの適切な活用で豊かに広がる学びの世界 ~大学での授業の楽しみ方~

 

デジタルネイティブである現在の学生たちにとって、授業でパソコンやタブレットを使うのはすでに日常。
現在では生成AIの登場によって、その日常がさらに大きく変化しようとしています。
大学での学びはどのように進化し、学生はその進化にどのように向き合っているのでしょうか。

 

記事に協力してくださった方々

上原 真結花さん

上原 真結花 さん

鹿児島大学 法文学部4年

矢田 佳惟さん

矢田 佳惟 さん

名古屋大学 医学部保健学科4年

後藤 駈さん

後藤 駈 さん

同志社大学 政策学部3年

山口 莉玖さん

山口 莉玖 さん

東京理科大学 工学部情報工学科卒業

 

授業でのパソコンやタブレットの使用は今や当たり前の風景

 

教科書を持って受けるのが当たり前だった高校の授業から、大学では学びの発展とともにその様相も大きく変化してきます。全国大学生活協同組合連合会が全国の学生を対象に実施した「大学における教育とICTに関する実態調査2025」によると、約9割の学生が授業やゼミでパソコンやタブレットを使用する機会があったと答えています。もはや、パソコンは学生にとっては必需品になっていると言っていいでしょう。では、そんなパソコンを現在の学生は、授業でどのように使っているのでしょうか。

 

上原教授からスライド資料や何十枚もあるレジュメがPDFでiPadに共有されるので、そのレジュメに蛍光ペンで印をつけ、疑問に思ったところを書き足す形でパソコンにノートテイクをします。左側にiPadを置いて資料を映し、右側にワードでメモを取り、そのワードやパワーポイントが共有されたかというところで、iPadを使うかどうかを決めています。

 

後藤授業によってレジュメの有無や配布の仕方が異なりますが、ここ数年で紙のレジュメや教科書に代わり、PDFで配布されることが多くなっています。自分的には紙面上のメモや勉強を取り入れた方が学習しやすいと感じているので、完全にデジタル上でノートテイクが完結しているわけではありませんが、修正・管理がしやすく、物理的にかさばらないこともあってデジタルノートテイクも普段の勉強スタイルに取り入れています。パソコンでPDFのレジュメを見ながら大事なポイントを打ち込むという授業の受け方が増えましたね。

 

矢田パソコンがMacBookなので、同じApple製品であるiPadを横に立てて外付けのデスクトップ画面のように使っています。パソコンの横にiPadを置いてiPadでブラウザや実験のレジュメを開き、パソコンでワードを開いてレポートを作るという使い方です。

 

異なる生成AIへの対応 確たる解のないまさに過渡期

 

このようにパソコンやタブレットの使用は今や当たり前の授業風景として定着していますが、その使用に様々な見解が示されているのが生成AIの活用についてです。大学側の対応はそれぞれ異なりますが、生成AIを積極的に活用しようという方針を示している大学もあります。
一方で生成AIに慎重な姿勢を見せている大学もあり、生成AIの使用に関しては、誰もが確たる解を持っているわけではなく、まさに過渡期にあると言えるのかもしれません。

 

リリース後、わずか3年余りで急速に浸透した生成AI

 

ChatGPTなど生成AIの利用状況(単一回答)

 

代表的な生成AIであるChatGPTがリリースされたのは2022年ですが、それからわずか3年余りで生成AIは学生の間にも広く浸透し、今や欠かせないツールの一つになっています。現に「第61回学生の消費生活に関する実態調査」によると、ChatGPTなどの文章生成AIを利用したことがある学生は92.2%におよび、23年調査の46.7%から大きく増加しています。逆に「利用経験がない」という学生は7.5%と23年調査の52.9%から大きく減っており、この2年間で学生の間でも生成AIが急速に浸透していることがわかります。

 

山口生成AIについてはChatGPT、Geminiなど複数のサービスを用途に応じて利用しています。最近ではNotebook LM※1や、プログラミング用途としてClaude Code※2を利用しています。MicrosoftのCopilotなども含め、生成AIを日常的に活用しています。私が生成AIを本格的に利用するようになったのは3年生からで、それ以前はChatGPTを含め、あまり活用していませんでした。使った前後でどんな変化があったかというと、特に新入生の方々に伝えたいのは、“正しく効率化できる”という点です。本来ならば何時間もかけてインターネットを探し回って得る情報も、生成AIだと簡単なプロンプトを1つ打つだけで調査してくれ、自分が欲しい情報をすぐに取得できるということが、大きな強みだと思います。それを使いこなすのは、「自分で考える時間をより効率的に増やす」ということにおいて大きな意味があるのではないでしょうか。
生成AIの出力をそのまま鵜呑みにしていいのかというと、それはまた違ってきます。自分が生成AIを日頃から使ううえで一番大事にしているのはやはり一次情報で、取得した情報の元の文献を何も調べずに使うということは基本的にありません。もちろん情報を探す過程は生成AIに任せますが、そこで得た情報が本当に正しいかどうかはしっかりと吟味しています。最近では補助的な確認として、ChatGPTで調べた情報の正誤をGeminiで確認するなど、複数の生成AIを組み合わせて検証することはよく行っていますね。

※1 NotebookLMは、Googleが開発したAIアシスタントツール。
※2 Claude Code とは、AI アシスタントの Claude(Anthropic 社の大規模言語モデル)をターミナルから直接利用できるようにしたエージェント コーディング ツール。
従来の ChatGPTなどのようにブラウザでやり取りせず、ターミナル上で CLI(コマンドラインインターフェース)として動作する点が最大の特徴です。

 

後藤生成AIについては、自分はちょっと細かい文章を考え、アイデアを出したいときに使っています。例えば全国の市町村が行っている政策や取り組みについて公文書を一つ一つ調べていくのはとても大変ですが、生成AIを使って「このような事例をこういった条件で行っている市町村とその取り組みを調べてほしい」と言うと結構いろいろなものを出してくれます。そういったアイデア出しや、普段自分が調べていたらたどり着けないような公の資料に行き着くことができるので、自分のできる手段を増やすためのツールとして生成AIを使用しています。ただ生成AIで重要なのは、最終的に必ず自分でその資料が正しいか確認してからレポートに活用することです。生成AIにのまれないで自分がちゃんと使う側に立って、今後普及していく生成AIに対応するということがとても大事だと思いながら使用しています。

 

上原私の場合、生成AIは本当にChatGPT一本で、あまり研究にがっつり使っているわけではありません。自分が書いた文章を点検してもらったり、レポートに何を書こうかと迷ったときにちょっと投げかけたりしています。

 

生成AIのさらなる進化がもたらす学びの可能性

 

生成AIの活用にあたっては、まだまだ多くの課題があることは否めません。しかし、それを効果的に活用することでよりよいパフォーマンスを発揮させてくれることを学生たちは敏感に感じ取っています。生成AIは1から10まですべてを任せられる魔法の杖ではなく、あくまでツールです。大切なのは、山口さんの言葉の中にもある「自分で考える時間をより効率的に増やす」ことなのかもしれません。
物心ついたときから新しいIT技術に触れてきたデジタルネイティブである現在の学生たちは、生成AIに対しても臆することなく受け入れることができました。今後、パソコンやスマートフォン、SNSなどと同じように生成AIが普及すると、幼少期から生成AIに囲まれて育つ「AIネイティブ」と呼ばれる世代が登場してきます。
生成AIは、これからも日進月歩で発展していくことでしょう。そして、大学での学びもそれにともなってこれまで以上に大きく進化していくはずです。生成AIによって広がるであろう学びの世界を、私たちも大きな期待感を持って楽しみにしたいと思います。

 

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【特集】ICTの進化がもたらす書籍事業と大学教育の岐路