Campus Life Symposium 東大生の健康と安全
卒業してからもずっと健やかな人生を過ごし続けるために

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まだ若い学生たちにとって「健康」は当たり前のものと考えがち。
それが健康診断の受診率が思うように上がらないことにもつながっているようです。
それらを改善するため、東京大学保健センターでは、現在、様々な取り組みを進めています。
今回は、国立大学保健管理施設協議会会長でもある柳元 伸太郎先生と、全国大学保健管理協会ヘルシーキャンパス運営委員の春原 光宏先生のお二人にお話を伺いました。

 

柳元 伸太郎先生

柳元 伸太郎 先生

東京大学 保健・健康推進本部教授
全国大学保健管理協会 理事、
国立大学保健管理施設協議会会長

春原 光宏先生

春原 光宏 先生

東京大学 保健・健康推進本部講師
全国大学保健管理協会
ヘルシーキャンパス運営委員

水口 智子

【司会】水口 智子

東京大学生協 専務理事

 

東大における学生・教職員の健康と安全づくりの要「保健センター」

 

水口本日は東大生の健康と安全をテーマにお集まりいただきましたが、お話をお伺いするにあたって、まずは東大における学生総合共済の給付状況について紹介をさせていただきます。この1年間で839件、4,982万円の共済金を給付しており、特に消化器系・呼吸器系の疾患で133件、こころの早期保障で60件、スポーツ事故で373件となっています。
私たち大学生協は保障を中心に様々な取り組みを通じて学生の健康と安全を支えていきたいと考えていますが、大学として学生たちの健康と安全を担っておられる保健センターの役割についてお聞かせいただきたいと思います。

 

柳元東京大学保健センターは、東大の学生・教職員の大学生活・教育研究活動が健康で実り多いものになるよう、健康管理のお手伝いをすることを一番の役割としています。そのため、駒場、本郷、柏の各地区にそれぞれ保健センターがあり、日々の健康管理と診療にあたっています。ただ一般的なクリニックと同じでは意味がないので、教育機関にふさわしい取り組みや成果を常に考えて活動しています。

 

水口具体的には、健診や診療以外にどのようなことを意識されているのでしょうか?

 

柳元例えば、体調不良で保健センターを訪れた学生が検査の結果インフルエンザに罹患していた場合などは、状況を記した手紙を学生に持たせて、担当教員と連携しながら学習に支障が出ないようサポートするといったことをしています。
学生たちには大学生活の中で得た健康に関する知識を生かして、社会に出てからも健やかに過ごすことができるようになってほしいと願っています。東大を卒業した人は生活習慣病が少ないとか、健康寿命が長いとか、そんなふうに言われるようになるのが理想ですね。

 

「いちょまる」誕生! 学生にとってもっと身近な保健センターへ

 

水口保健センターでは常に学生たちのことを考えておられるにもかかわらず、保健センターを訪れる学生がなかなか増えないとお聞きしています。

 

柳元保健センターが日々やっていることは、いわばインフラストラクチャーなのではないかと。大学というと教育や研究が一番大切なのは言うまでもありませんが、健康でなければそれもままなりません。結局、体と心が元気じゃないと勉強できない。そういう意味で電気やガス、水、道路などと同じように例えることができると思っています。なのに保健センターを訪れる学生が少ないのは、その存在を知らないからなのか。知らないというよりは、身近に感じられていないからなのかもしれません。

 
いちょまる

春原保健センターで診療や相談が受けられることを知らない学生が、まだいますからね。そこで学生たちに何とか保健センターのことを覚えてもらいたい、困りごとがあればどんな些細なことでも気軽に相談してもらいたい、そして学生たちともっとコミュニケーションを取りたい、そんな思いから、保健センターではこのたび「いちょまる」というキャラクターをつくりました。
1906年頃に小石川植物園から移植され、安田講堂前にイチョウ並木ができたときに生まれたイチョウの妖精という設定で、保健センターの案内役として、ウォーキングチャレンジをはじめとした各種健康イベントやキャンペーン広報に関わりながら、学生・教職員の健康意識を高める活動を支えてくれる存在として活躍してもらえたらと思っています。キャラクター名称の募集には、なんと1,000件を超える応募をいただいたんですよ。

 

水口ウォーキングチャレンジには、私も東大生協チームとして参加しました。総勢690名が参加して、平均歩数は7,196歩とお聞きしました。これからさらに参加者を増やしていくためにも、いちょまるが活躍してくれそうです。

 

時代を超えた普遍的課題、こころの健康にいかにアプローチするか

 
いちょまる

柳元明らかに体調が悪いとか、実際にケガをしたとなれば躊躇なく保健センターを訪れてくれるのですが、そうじゃない場合、特にメンタル面に問題を抱えている学生にアプローチしていくのは本当に簡単ではないと感じています。
東大としては学生のメンタルの状態っていうのは常に重視していますし、実は昭和30年代後半ぐらいから取り組みを進めてきました。ある意味普遍的なテーマだと思うのですが、コロナ禍を機にそれがより顕著になってきたということでしょうか。事実、先ほどの共済金の支払件数を見てもこころの早期保障が増えてきています。

 

水口メンタル面に問題を抱えている人の母数が増えているからなのか、時代的な背景から受診自体のハードルが下がったからなのか。私としては、この増えているという事実をどう評価するかについては、なかなか難しいと思っています。

 

春原心のことも体のことも、誰もが気軽に受診したり相談したりできる環境がある、ということを、まずは知ってもらいたいですよね。大学生協さんとも連携を深めながら、いちょまるにも活躍してもらって、学生が「ちょっと行って聞いてみようかな」と自然に保健センターにつながれるような体制を、これからもつくっていけたらと思っています。

 

水口共済の窓口には、そうした学生が給付の申請や相談に来ます。その際に様々なお話をお聞きするので、その学生が現在どのような問題を抱えているかについても知ることができます。必要であれば、共済の説明と同時に保健センターへの案内をすることならすぐにでも始められそうな気がします。

 

真に求められる保健センターであるためにできること

学生が自分で回る健診スタイル
学生が自分で回る健診スタイル

学生が自分で回る健診スタイル

学生が自分で回る健診スタイル
学生が自分で回る健診スタイル

 

水口最後に学生の健康と安全に関して、これから目指したい方向性や取り組みについてお聞かせください。

 

柳元健康診断の診断率の向上を、やはりもう少し図りたいと思っています。すべての学生に通知を出しているので、知らないと言われてしまうと困るのですが、面倒くさいとか、スケジュールが合わない、気分ではないという学生も少なからずいるのが現実です。それを解決するとなると、もう少し根本的な対策が必要なのかもしれません。そもそも現在の健康診断は学生も教職員も同じ健診項目で実施されているのですが、年齢が違えば健康リスクも違うはずです。もちろん定められたガイドラインを守りながらということになりますが、真に求められる新たな健康診断というものをデザインすることが重要だと思っています。
それと大学生協さんの学生委員会のような組織をつくれればとも考えています。学生たちが何を考えているのか、彼らを通してリサーチするとともに、健康診断のお手伝いをしてもらうなど、いろいろできることがあるのではないでしょうか。

 

水口確かに学生たちが何を考えているのかをまず知ることが重要ですね。また健康診断の受診率向上に関しては、大学生協でも協力できる部分があるかと思います。例えば、メールマガジンを活用して保護者の方にお知らせをし、保護者の方から学生に受診を後押ししてもらうというのも一手かなと。春原先生はいかがですか?

 

春原基本的に今の学生さんは、興味のあるものについては、調べようと思えばいくらでも調べられるんですよね。スマホにキーワードを入れれば多くの情報が一気に出てきますし、AIが要約までしてくれます。その一方で、興味のないものについて体系的・網羅的に学ぶとなると、やはり意識的な働きかけが必要になります。ここは教育機関の大事な役割の一つだと思っています。
学生に「健康の維持」や「病気の予防」についてどうやって関心を持ってもらい、知ってもらい、そして日常の中で実践してもらうか。これはなかなか簡単ではありません。でも大学は、それを伝えられる最後の機会でもあります。だからこそ、保健センターが中心になって、学生の関心を引き出せるようなプログラムをつくっていきたいですね。

 

水口私たち大学生協にもお手伝いできることがまだまだたくさんありそうです。本日はどうもありがとうございました。

 

関連情報

国立大学保健管理施設協議会

国立大学保健管理施設協議会は国立大学保健管理センター長会議を前身として、50年以上の長きにわたり全国の学生および教職員の安全衛生の増進のために活動を続けています。全国の国立大学の保健管理施設(保健センター等)が連携し、学生・教職員の心身の健康管理・増進に関する調査研究、相互交流を行っています。
 

主な活動

  • 国立大学保健管理施設間の相互連携と情報交換
  • 学生・教職員の健康管理・保健活動に関する調査・研究
  • 定期健康診断、メンタルヘルス対策、感染症対策
  • 各種研修会やフォーラムの開催
 
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