島大生の健康と安全
学生の心身の健康増進と地域連携を通じた救命教育「PUSHプロジェクト」

島大生の健康と安全 学生の心身の健康増進と地域連携を通じた救命教育「PUSH プロジェクト」島大生の健康と安全 学生の心身の健康増進と地域連携を通じた救命教育「PUSH プロジェクト」

 

島根大学 松江保健管理センター
学生や教職員が心身ともに健やかなキャンパスライフを送れるよう、身体のケアから心のサポート、予防教育まで幅広く取り組む松江保健管理センター。
近年では、心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)の普及啓発活動「PUSHプロジェクト」の推進に力を入れています。
PUSHプロジェクトは何を目指し、どのような活動を行っているのか。そして地域の中で果たす役割とは――。
松江保健管理センターの取り組みを取材しました。

 

あらゆる角度から学生と教職員の心身の健康と向き合う

PUSHプロジェクト
島根大学の松江保健管理センターは、大学における「保健室」として、学生や教職員が健康的な生活を送れるよう専門的な立場から支援しています。
「当センターでは、定期健康診断や学生相談はもちろん、体調不良時の専門医や保健師による健康相談、女性特有の悩みへのアドバイス、一人暮らしの栄養管理、熱中症や生活習慣病の予防教育まで幅広く対応しています。さらに、メンタルヘルスの個別カウンセリングや、性の多様性(LGBTQ+等)に関する相談など、その範囲は多岐にわたります」(河野教授)。
相談は状況に応じてオンライン、電話、メール、対面などと柔軟に使い分けられ、プライバシーにも十分配慮された利用しやすい体制が整えられています。そんな同センターが近年、特に力を入れているのが、心肺蘇生とAEDの普及活動「PUSHプロジェクト」です。
 

AEDへの心理的ハードルを下げる「PUSHプロジェクト」

PUSHプロジェクト
現在、日本では心臓の原因による突然の心停止が年間約9.1万人、1日に約250人(約6分に1人)発生しています※。心臓が停止して血液の循環が止まると、数秒で意識を失い、数分で脳細胞の破壊が始まります。心停止が起きた場合、胸骨圧迫やAEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%低下するといわれています。日本は世界的に見てもAEDの設置密度が高い国ですが、実際に使われる割合が低いことが課題となっています。その背景にあるのが、「間違えて使ったらどうしよう」「かえって傷つけてしまわないか」という心理的な不安です。こうした障壁を取り払うために提唱されたのが「PUSHプロジェクト」です。「PUSH」には、①胸骨を押す(心臓マッサージ)、②AEDのボタンを押す、③自分の背中を押して一歩踏み出すという3つの意味が込められています。
「救命措置を学ぶ講習会は消防署などで開催されていますが、所要時間が約3時間かかるため、参加のハードルが高いのが現状です。そこで、松江キャンパスでは簡易キットを使って時間を大幅に短縮し、学生が気軽に参加できる講習会を始めました。その後、広島PUSHの講習会に参加した出雲キャンパスの医学部生が、この取り組みに関心を持ってくれたことをきっかけに、今後は学生主体で講習会を進めていくことになりました(杉原准教授)。
※総務省消防庁:令和7年版「救急・救助の現況」
 

心肺蘇生トレーニング用簡易訓練キット「あっぱくんライト」

プロジェクトで使われるのは、心肺蘇生トレーニング用の簡易キット「あっぱくんライト」です。
イラストが描かれたシートの上にハート形のスポンジ製心臓部を置き、正しく圧迫できると「ピッ」と音が鳴る仕組みになっています。スポンジは硬さを選べるため力の弱い児童でも扱いやすく、「どのくらいの強さ・深さで押すべきか」という加減を音と感触で直感的に理解できます。
これ一つで、状況確認・AEDパッドの貼付位置・胸骨圧迫という一連の流れを体験可能です。また、高価な人型ダミーと異なり、受講者全員に配布できるため、順番待ちの時間を減らし、全員がじっくり体験できる大きなメリットがあります。デザイン的にもハート形のスポンジ製心臓部は可愛いピンク色、イラストが描かれたシートもきれいな緑色と、全体的にポップな印象にまとめられています。小学生にとって人型ダミーはイメージ的に少し怖いかもしれませんが、これなら楽しく、遊び感覚でチャレンジすることができます。
「救急車が到着するまでの平均時間は約10分です。その間、圧迫を続けるハードさをトレーニングで体感しておくことで、いざという時にも迷わず動けるようになることを目指しています」(杉原准教授)。
 
  • あっぱくんライト
  • あっぱくんライト
 

誰もが当たり前のように救命できる地域社会を目指して

今後、松江保健管理センターでは講習を受け資格を取得した学生「PUSHインストラクター」を中心に、学内だけでなく近隣の高校、地元企業、地域の公共施設やコミュニティなどへ活動の場を広げていく予定です。今後はさらに多くのインストラクターを育成するとともに、動画教材やオンライン講習の活用など、対面に限らない柔軟な学びの場を提供し、「誰もが当たり前のように救急救命ができる地域社会」の実現に向けて取り組みを続けていきます。

 

取材にご協力いただいた方々

河野美江教授
島根大学
松江保健管理センター
センター長

河野 美江 教授
杉原 志伸准教授
島根大学
松江保健管理センター

杉原 志伸 准教授

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【特集】新たな時代の地域プラットフォームへ