本のなかの手紙
いずみ委員・読者スタッフSelection
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▼特集「『手紙』の魅力 再発見!」記事一覧
「手紙」をキーワードに、『izumi』のスタッフが本をピックアップしました。登場人物にそっと寄り添ったり、ときには追い込んだり、誘惑したり……手紙がどのような展開に導くのでしょうか。ぜひ本を読んで、お確かめください♪
トンケ・ドラフト〈西村由美=訳〉
『王への手紙』
岩波少年文庫/
定価(上)1,012円・(下)924円(税込)(上巻)購入はこちら >(下巻)購入はこちら >騎士の叙任式を翌日に控えた16歳の見習い騎士ティウリ。助けを求める老人の訪問から、思いがけず隣国の王への重要な手紙を届ける大役を担うことに! 迫りくる追手やスパイとの攻防戦には目が離せない。ティウリの誠実さや、行く先々で出会う個性豊かなキャラクターも魅力的。児童文学だけれど、大人の冒険心をも刺激する!
長谷川真紀(千葉大学3年)
アガサ・クリスティー〈青木久恵=訳〉
『そして誰もいなくなった』
ハヤカワ文庫/定価1,034円(税込)購入はこちら >招待状によって、互いに面識のない10人が兵隊島の館に集まる場面から話は始まります。不気味な集まりと思いつつ夕食交流を深める10人でしたが、突如謎の音声を聞くことになります。そこから、館に飾られている童謡通りに、人が死んでしまうのです。犯人探しも面白いですが、人が減るごとに人物同士が疑心暗鬼になるドラマ性も魅力です。
木村壮一(電気通信大学大学院M2)
小川糸
『ツバキ文具店』
幻冬舎文庫/定価660円(税込)購入はこちら >ツバキ文具店は手紙の代書屋さん。営んでいる鳩子さんの優しい語り口にほっとする作品。いろんなところに憧れがつまっていて、こんな街に、こんなお店があったらいいのに、と思わず思ってしまいます。
永井七実(金沢大学2年)
島本理生・辻村深月・
宮部みゆき・森絵都
『はじめての』
水鈴社/定価1,760円(税込)購入はこちら >4人の作家が「はじめて」をモチーフに書いた短編集。島本理生さんの「私だけの所有者」は、7通の手紙から構成される。手紙からだんだんと明らかになる真実に目を見張ること間違いなし。本書に収録されている作品はそれぞれYOASOBIの楽曲とコラボしており、読んで・聴いて・観て楽しめる1冊。
長谷川真紀(千葉大学3年)
森見登美彦
『恋文の技術』
ポプラ文庫/定価682円(税込)購入はこちら >僻地の研究所に飛ばされた男子大学院生が、文通武者修行と称して様々な知人に手紙を送り続ける話だ。文通相手からの返信は一切書かれておらず、主人公の手紙から相手の返事を推測するしかないので、想像力をとんでもなく刺激される点が魅力だ。あまりにも面白くて声を出して笑ってしまうので、できれば家で読むことをおすすめする。
山原和葉(同志社大学1年)
一穂ミチ
『スモールワールズ』
講談社文庫/定価825円(税込)購入はこちら >一穂ミチさんの書く痛みや優しさで満ちた様々な世界が入っている短編集です。この本の中に収録されている「花うた」という作品は、唯一の肉親である兄を殺された女性と、女性の兄を殺したことで服役中の男との手紙のやりとりで進んでいきます。兄を奪われ怒る女性と恵まれない境遇で育ち反省がわからず苦しむ男のやりとりに胸を打たれます。
山原和葉(同志社大学1年)
嶽本野ばら
『ミシン』
小学館文庫/定価482円(税込)購入はこちら >収録作「世界の終わりという名の雑貨店」に手紙が登場し、主人公の「僕」が愛した「君」の内面が綴られます。「雪が降っているのを見て、それを貴方に伝えたいと思った。その気持ちだけで逃避行をする理由になるのです。」「僕」から「君」へ、もう二度と届くことのない切実な語りかけが哀しく響く純愛物語。
熊野有紗(北海道大学大学院修士2年)
有島武郎
『小さき者へ・生れ出づる悩み』
新潮文庫/定価374円(税込)購入はこちら >「生れ出づる悩み」の、かつて東京から札幌まで絵を引っさげてはるばる「私」の元へやってきた「君」が十年ぶりに便りをよこすそのシーンを、僕にはいまだに忘れられずにいる。物語中の手紙の出番は少ないけれど、雨と泥で汚れた魚の生臭い包み紙の臭いを僕は読みながらにして目と鼻の先に感じたのだった。
中川倫太郎(東京工業大学)
太宰治+紗久楽さわ
『葉桜と魔笛』
立東舎/定価1,980円(税込)購入はこちら >「桜が散って、このような葉桜のころになれば、私はきっと思い出します。―― 」病気の妹を持つ「私」は余命僅かな妹を不憫に思い、男の人のふりをして手紙を送ります。しかしその妹には実は秘密があって……短い物語の間にも仕掛けがいくつもあり退屈しません。最後に笛を吹いたのは誰だったのか、想像するのも面白いです。
木村映里乃(日本女子大学3年)
三浦しをん
『ののはな通信』
角川文庫/定価880円(税込)購入はこちら >6年前に単行本で読んだが、二人の手紙のやり取りを読者が第三者の視点から読むという特徴的な小説だった。手紙のやり取りだけで情景が思い浮かんできたのが印象に残っている。
梅田夏希(大阪大学3年)
綾辻行人
『十角館の殺人』
講談社文庫/定価946円(税込)購入はこちら >この本を読んだことがない人が羨ましいです。孤島で大学生が次々死んでいく王道展開と圧倒的結末のクローズドサークルものの名作です。ぜひ読んでください。また、読了後は実写ドラマも見てください。この作品を真正面から映像化したことに狂気を感じ、脱帽すること間違いなしです。
古沼花月(新潟大学4年)
梶井基次郎
「Kの昇天」(『檸檬』に収録)
角川文庫/定価440円(税込)購入はこちら >「あなた」からの手紙を受けて、「私」が語る友人「K」の死の真相。真相? 妄想? 月と影に囚われて死んだ「K」。影に乗っ取られる? イカロスのように堕ちていく? 人によって様々な解釈が生まれる作品です。ぜひあなたも考えてみてください。
古沼花月(新潟大学4年)
川村元気
『四月になれば彼女は』
文春文庫/定価792円(税込)購入はこちら >元恋人 春からの9年ぶりの手紙。失踪した婚約者 弥生からの手紙。精神科医の藤代に宛てられた手紙には、彼がいつの間にか忘れてしまった切なくも美しい感情があった。春も弥生も、大切な人に、口ではついに言えなかった大切なことを伝えたいと願い、書くことで自分の気持ちをわかってゆく。映画化作品を観たあとの方にもおすすめ。
齊藤ゆずか(京都大学大学院M1)
湊かなえ
『往復書簡』
幻冬舎文庫/定価737円(税込)購入はこちら >読み応え抜群の書簡形式ミステリー。手紙ならではのすれ違いや面と向かっては言いづらい思い切った告白。差出人と受取人の関係性や文面の裏に隠された本心をあれこれ推理しながら読み進めるも、最後の手紙を読んで思わず「そう来たか!」と唸った。手紙のやり取りを通して十数年越しに明かされる事件の真相は果たして……。
高津咲希(千葉大学4年)
瀬尾まいこ
『そして、バトンは渡された』
文春文庫/定価847円(税込)購入はこちら >苗字が何度も変わりながら、現在は血の繋がらない父親と暮らす主人公・優子。人間関係や成長を通して、「家族」とは何かを考える。3人の父親と2人の母親の性格はそれぞれ違うのに、優子と接する親たちの言動には、いつも温かい「愛」が感じられる。「本屋大賞」を受賞し、漫画・映画化もされた傑作の原作を、ぜひ味わってほしい。
山崎ひかり(信州大学大学院M2)
原田マハ
『カフーを待ちわびて』
宝島社文庫/定価503円(税込)購入はこちら >沖縄与那喜島に暮らす明青のもとに見知らぬ人から一通の手紙が届く。差出人は明青の書いた絵馬に惹かれ会いに来ると言うのだった。顔も知らない二人が文通のような始まりから縁を繋ぐ。目の前の人と向き合い、対話し、寄り添う。沖縄の風に吹かれながら自分と大切な人に思いを馳せる一冊。
力武麗子(早稲田大学4年)
井上荒野
『キャベツ炒めに捧ぐ』
ハルキ文庫/定価594円(税込)購入はこちら >夫を亡くした郁子のもとに届いた、同姓同名の別の人宛の年賀状。なんとなく手元に置いたままだったが、ふと思い立ってその人の家に届けにいくと―― 。芋判、あさりフライ、キャベツ炒め。三人の、それぞれ事情を抱えた女性たちの過去や現在。それらの機微が食べ物通じてあらわれてくる、あたたかな物語。
後藤万由子(名古屋大学6年)
喜多川泰
『「手紙屋」
~僕の就職活動を変えた
十通の手紙~文庫版』
ディスカヴァー・トゥエンティワン/
定価990円(税込)購入はこちら >就活がただの通過儀礼のような義務的活動ではなく、未来を進む船探しの旅だと思える作品です。人は乗り越えた逆境の数だけ強くなれるだけでなく、その壁の向こうにいる多くの人を笑顔にできるのです。それを知ったら、困難な仕事に取り組みたいと思えました。就活中の人、これからの人、来年社会人になる皆さんに読んで欲しいです。
木村壮一(電気通信大学大学院M2)
金井美恵子
『愛の生活・森のメリュジーヌ』
講談社文芸文庫/定価1,650円(税込)購入はこちら >微に入り細をうがつ情景描写は曲がりくねって出口の見えない心象風景と濃密に絡みあい、気だるさにも似た恍惚のベールが読み手の目と耳に膜を張るとき、作中に登場する手紙は「フィクション(嘘)の中のフィクション(嘘)」として、マイナスかけるマイナスがプラスへ反転するように翻って真実味を帯びていく。
中川倫太郎(東京工業大学)
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