search
いずみ委員Selection
すこし・フシギな・ものがたり
facebookでshareできます
twitterでshareできます
lineでshareできます
▼
特集「すこし不思議な物語」記事一覧
SFからホラー・怪奇、すこしフシギなお話までいろいろ取り揃えました。普段とは違うジャンルの作品に触れて、どきどきわくわくしてみませんか。
ハラルト・シュテュンプケ
〈日高敏隆・羽田節子=訳〉
『鼻行類』
平凡社/本体800円+税
鼻行類とは1941年に南海のハイアイアイ群島で発見された哺乳類であり、属によって鼻を様々に用いる。たとえばオニハナアルキは常に逆立ちの姿勢をとり、ゾウに似た四本の鼻で体を支え移動する。編者解説によれば鼻行類はハイアイアイ群島と共に海底へ沈んでおり、本書がほぼ唯一の資料となる。この生物のどこまでも数奇なこと! (杉田)
小川哲
『ユートロニカのこちら側』
ハヤカワ文庫/本体840円+税
もし個人情報を全て提供する代わりに高水準の暮らしが保障されるとしたら、あなたはどうするだろうか。この物語はそんなリゾートシティを舞台に進んでいく。人々が幸福と安全の代わりに本当に売り渡していたものとは何か。情報社会のその先を痛烈な切り口と巧みな構成で描き出した新時代のディストピア小説です。 (笠原)
メアリ・シェリー〈森下弓子=訳〉
『フランケンシュタイン』
創元推理文庫/本体740円+税
「フランケンシュタイン」と聞いて皆さんは何をイメージしますか? 映画に登場した怪物のように醜く恐ろしいものが浮かぶ方が多いでしょう。そんな方はこれを読んでみてください。実は非常に人間的な怪物がなぜこうも恐れられるのか。その悲しい物語を知れば180度イメージは変わり、この不思議な生きものが愛おしくなるでしょう。 (河本)
長野まゆみ
『デカルコマニア』
角川文庫/本体680円+税
タイムマシン。素敵な響きだ。未来に行くことは理論上可能らしいので、百年後にはそんな機械が開発されているかもしれない。本書にはタイムマシンに乗って時空を自在に行き来する一族が登場する。時間軸と人間関係が四次元的に交差していて複雑だが、終盤で謎が解けると「そういうことだったのか!」と思わず声を上げてしまった。 (北岸)
雪舟えま
『恋シタイヨウ系』
中央公論新社/本体1,700円+税
この太陽系に似た別の太陽系があるってご存知でしたか? 金星は植物で覆われていて、木星に住んでいるのは二足歩行をする有袋猫。月には日本の葬儀会社の支社があって、日本出身の支社長がパートナーと二人暮らしを満喫しています。そんな太陽系の、当たりまえみたいに特別な恋の短編集。読んだらいろんなものが愛おしくなってしまいました。 (杉田)
H・G・ウェルズ〈中村融=訳〉
『宇宙戦争』
創元SF文庫/本体700円+税
火星人vs人類、この戦いを描いた最古の小説が本書です。克明に描かれた火星人の侵略とロンドンの崩壊は、読者に色あせることのないスリルを与えてくれるでしょう。また、大混乱によって暴かれる人間の本性も物語を鮮やかに彩っています。これを読まなきゃ始まらない、原点にして頂点、パニックSFの金字塔です。 (笠原)
ロバート・L・スティーヴンソン
〈田口俊樹=訳〉
『ジキルとハイド』
新潮文庫/本体400円+税
人間は不思議な生き物です。善の側面と悪の側面を併せ持っています。それを教えてくれるのがこの一冊です。この本は「二重人格」だけでなく「善と悪の二面性」もテーマの一つであると考えます。あなたの中にもハイドのような一面があるかもしれません。この本をきっかけに人間の不思議について思いを巡らしてみては? (河本)
松田青子
『スタッキング可能』
河出文庫/本体550円+税
誰もが入れ替わりの利く、仮想社会の中で、棘のある日常が展開される。読みながら生じるもやもやは作品に対してなのか、社会に対してなのか……。翻弄される表題作ほか、シュールな世界観で社会に物申す作品集。(任)
東直子
『とりつくしま』
ちくま文庫/本体600円+税
私は死んでしまったけど、大切な人のそばにいたい。—「とりつくしま係」が、大切な人のそばの「モノ」になるお手伝いをします。大切な人のマグカップや、名札に成り代わる死者の語りは、少し不思議で、とても切ない。 (任)
小松左京
『地には平和を』
角川文庫/本体680円+税
もしも第二次世界大戦が終わってなかったら……。そんな状態の日本が舞台となる、歴史とは何かを考える「地には平和を」。タイトル通り日本を売るというかわったストーリィの「日本売ります」。宇宙人が登場する、鮮烈なオチがクセになるショートショート集「ある生き物の記録」。3編からなる不思議なSFの世界へようこそ。 (河本)
秋竹サラダ
『祭火小夜の後悔』
角川書店/本体1,400円+税
軽快な語り口から紡がれる土着の怪異譚のようなホラーエンターテインメント。異様な存在が登場人物たちの苦悩と共に生々しく描かれており、手に汗握る最終決戦まで一気読み間違いなし。読了後、床のタイル、部屋の隅、知り合いのあの人が気になってしまうような、日常にホラーの影を落とす一冊です。 (笠原)
円城塔
『後藤さんのこと』
ハヤカワ文庫/本体740円+税
不思議だなぁ、としみじみ思う。後藤さんの設定(粒子かつ波、横波で縦波)も不思議だけど、理解できていないから説明できない。なのにすらすら読めてしまうのは文章があまりに心地いいから、なんてあり得る!? 不思議ギミックの乱れ撃ちと言葉のリズムに流される快感がクセになること間違いなし。もちろん不思議ギミックを味わえば二度楽しい、はず。 (杉田)
遠田潤子
『オブリヴィオン』
光文社/本体1,600円+税
妻を殺した主人公が出所し、娘や義理の兄とのいびつな関係を見つめ直していく。それと平行して、主人公の類いまれなるある能力が明らかになっていく。裏社会の陰謀に巻き込まれた主人公の運命はどうなるのか。迫力ある大作。 (任)
本谷有希子
『異類婚姻譚』
講談社文庫/本体560円+税
仲のいい夫婦は雰囲気や顔つきが似てくるものだ、という説をどこかで聞いたことがある。ミラーリング効果という言葉もあるし、これは本当なのだろう。しかし伴侶が自分そっくりになってしまうなんて、考えてみればそら恐ろしいことだ。寓話の体裁を取っているが、結婚という制度の本質を突いているようで、背筋が寒くなった。 (北岸)
村田沙耶香
『殺人出産』
講談社文庫/本体600円+税
所変われば品変わると言うけれど、これは時間についても言えることだと思う。たとえば、今から二百年前には切り捨て御免という特権が武士に与えられていた。今の私たちにとっての常識は、数十年後には非常識になっているかもしれない。本書を読んでいると、自分にとっての「常識」がぐにゃりと歪んでいく錯覚に捉われる。 (北岸)
特集「すこし不思議な物語
」記事一覧
▶
Essay 星新一 時を超えて読み継がれる理由
▶
Essay SFのすすめ この秋SFデビューしたいあなたに
▶
Essay フシギでふしぎじゃない神話のお話
▶
Essay 古今東西妖怪のせい
▶
私のセンス・オブ・ワンダーな一冊 〜読者アンケートから〜
▶
いずみ委員Selection すこし・フシギな・ものがたり
160号TOPに戻る
最新号を見る
ご意見・ご感想はこちらから
*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。
ページの先頭へ