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そうだ、オンラインでサークルを作ろう。

特集「コロナと向き合う」記事一覧


岩田 恵実(名古屋大学3年生)
 

 2020年4月4日夜10時(推定)、ある名大生の唐突なる思い付きと見えざる手に導かれたのかとも思われる行動力によって、名古屋大学読書サークルが結成されました。唐突といえども、前々から頭の中になんとなくサークルの構想はあったのです。もともと私はスマホアプリによって気が向いたときに読書記録をつけていましたが、どうにも続かない。なぜだろうと考えると、どうやら私は感想や考察をただ公の場に発表するのではなく、それをいろんな人と共有・交換したいのだと気が付きました。しかしオンライン上で一人細々と感想を書いていても中々多くの人の目に留まることはなく、書き込みに対する反響をもらうことが少ないのです。「いいね」のようなワンクリック評価だけではなく、お互い文章で作品について語り合いたい……このもどかしさが長らく私の心に蓄積していたのでした。
 さて、新年度、私は大学に入って3回目の春を迎えてしまいました。春になると何か新しいことをやってみたくなるものです。実際当時の私がそのような野心を抱いていたかは忘れましたが、ある夜、お風呂上がりの私はアルキメデスがごとくひらめいてしまいました。Twitter上で読書サークルを開いて名大生の名義で本の感想を呟けば、誰か他の名大生が反応してくれるかもしれない。思い立ったが吉日、私はすぐさまサークルアカウントを作り、一人細々と読んだ本の感想を投稿し始めたのでした。とりあえず名大生向けのハッシュタグをつけて「サークル部員募集、一緒に本の感想を呟きましょう」と投稿したところ、思っていた以上の勢いでサークルの存在が知れ渡り、一か月で10人程度サークル部員が集まりました。Twitterの拡散力にすこし驚きました。
 そしてある程度人数が集まると同時に、サークル開設の本来の目的だった本を通した交流の場を作ろうという意識が具体化されていきました。そこで、丁度春学期から大学の講義で使用していたZoomを活用してオンライン読書会を開催することを企画したのです。さて、ようやく具体的なオンライン読書会の話になってきました。そもそも読書会の形式は実に様々で特に決まりはありませんが、代表的な形式は、

 
①各自好きな本を持ち寄って感想を言い合う形式
②一つの本を事前に読んできて感想を言いつつ内容を深堀する形式
③各自おすすめ本をプレゼンし、一番魅力的なプレゼンを決めるビブリオバトル形式
 

の3種です。
 我が読書サークルでは①の各自持ち寄り形式をメインで行い、幅広い作家・ジャンルの本を紹介できるようにしています。とはいえ、フリーテーマで好きな本を持ってくるばかりだと会自体がマンネリ化する恐れがあるので、毎回テーマを決めてそれに沿った本を用意する形式にしました。みんなの意見で一番難しかったテーマは「夏」だったようです。参加人数は最少の3人(私含む)でしたが、少人数なりにアットホームな雰囲気のもと雑談に花が咲いたので結果オーライに終わりました(ちなみにその時は、乙一作『夏と花火と私の死体』、森見登美彦作『ペンギン・ハイウェイ』、F.サガン作『悲しみよこんにちは』が紹介されました)。
 この結果を踏まえて、それ以降のテーマはなるべくわかりやすくて該当する本が連想しやすいようなテーマを心がけています。例えば短編集、エッセイ、SF、シリーズもの、癒やされる本などを取り上げたところ毎回実に様々な本が集まり、今まで私が全く聞いたことのない本も何冊か教えてもらえました。毎回参加者は本のおすすめポイントを熱く語ってくれるので、ただあらすじを読む何倍もその本を読みたいと感じます。少なくとも私に関しては、読書会を通して読む本の幅が格段に広がりました。皆さんの話はとても面白いので、正直自分が発表しなくても人の話を聞いているだけで十分楽しいです。
 ちなみに、Zoomは全員顔を出してできるだけリアルの対話に近づけるようにしています。顔出しすると警戒心がほぐれるのか、オンライン上の交流だけでも打ち解けやすいみたいです。また機能面では特に画面共有機能が便利で、画像や動画が簡単に共有できるためメディアミックスの布教活動が気軽にできます。もちろん問題点も多少ありますが、今のところはオンラインのよさを取り入れた交流ができていると思います。まだ会自体は4、5回しか開催していませんが、今後はビブリオバトル形式やある一冊の精読会なども行う予定です。オンラインの気軽さを活用して、コロナ自粛に負けず、読書を通した楽しい交流の場を作っていきたいものです。サークルの活動が気になった方は、Twitterで「名古屋大学読書サークル(@meidaidokusyo)」と検索してみてくださいね。

 

読書会で紹介された「夏」がテーマの本

乙一
『夏と花火と私の死体』
集英社文庫/本体420円+税

森見登美彦
『ペンギン・ハイウェイ』
角川文庫/本体640円+税

フランソワーズ・サガン
〈河野万里子=訳〉
『悲しみよこんにちは』
新潮文庫/本体490円+税

P r o f i l e

岩田 恵実(いわた・めぐみ)
 最近写真を撮る機会が乏しいせいか、著者近影に使えそうな写真があまりにもなくて焦りました。しょうがないので家族に写真を撮ってもらったら自粛太りしたことに気がついてしまい更に焦りました。

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