小説で見つけた
あの頃の“モノ”たち
~1960-1980年代に活躍していた物~

特集「歴史のとびら」記事一覧

 昭和30年代後半、『三種の神器』と呼ばれた家電(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)がありました。その後、40年代には「新・三種の神器」として、カラーテレビ、クーラー、自動車が登場。当時はそれぞれが画期的な製品で、人々の生活を豊かにしてくれましたが、いまや、カラーテレビは薄型テレビに、クーラーはただお部屋を冷やすだけでなく、至れり尽くせりの機能が付き、そして、自動車は自動運転も現実味を帯びてきて、新たなステージに入りました。
 時代ごとに流行った機器や生活用品が小説の中にはたくさん出てきますが、今でも全く違和感なく読めるものもあれば、その姿かたちが想像できないものも、少なからずあります。そこで、昭和30年代後半から50年代後半ごろ(1960年〜1980年代)までを舞台にした小説から、今はもう見かけないもの、姿を変えてしまったもの、の一部を探してみました。
 

吉本ばなな
『TUGUMI』
中公文庫/定価503円(税込)

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あなたの心のかえるところは、どこですか? 実家? 高校生だったあの頃?この本で描かれるのは、語り手「まりあ」の心のかえる場所、従姉妹の「つぐみ」と過ごした夏の思い出。五感まで持っていかれるような美しい描写に、はっとする言葉たち。きらめきも切なさも、青春をぎゅっと閉じ込めたような一冊です。(川柳)

 

今は見なくなったモノ

  • ★電話を部屋に引き込む(という表現)

    固定電話はまだ見るけれど、携帯がある現代では使わない表現となりました。

  • ★電話ボックス

    電話をかける場面で出てくる「ボックス」……最近は携帯電話・スマホが普及してきて、だいぶ減りましたね。

  • ★レコード

    CD、MD、MP3、そして配信と形がかわる中、最近また人気が出てきましたが…。

そういえば、1980年代に、「ドライブスルー公衆電話」なるものが登場しました。車に乗りながらにして公衆電話が使えるというもの。次第にフェイドアウトしていきましたが、まだ現存しているものがあるのでしょうか。

 
 

庄司薫
『赤頭巾ちゃん気をつけて』
新潮文庫/定価539円(税込)

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1969年東大入試が中止になり、本書の主人公は大学に行くのをやめて独自に知性を伸ばそうと試みる。「みんなを幸福にするにはどうすればいいか」が彼の抱える最大の問題だ。本書の中で彼は明確な結論には至っていないが、幼馴染の由美や偶然出会った小さな女の子に対する彼の優しい言動に答えの一端が示されている気がする。(北岸)

 

今は見なくなったモノ

★差し込み式の電話

 

小松左京
「戦争はなかった」
(小松左京、東浩紀=編『小松左京セレクション1』より)
河出文庫/定価1,045円(税込)

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中学三年の時に終戦を迎え大人になった主人公だが、ある日を境に、人々が「戦争を全く知らない」というので驚く。それで軍歌を探しにレコード屋へ行くという場面があった。レコードを集める人は今もいるが、当たり前の存在ではなくなった。少年期に戦争を経験した小松のSFからは、戦争すら時代とともに捉えられ方が変わっていくことが伝わる。(齊藤)

 

今は見なくなったモノ

★レコード屋
とはいっても、レコードの人気復活で、最近またレコード屋が少しずつ現れてきましたね。

 

宗田理
『ぼくらの七日間戦争』
角川文庫/定価704円(税込)

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赤のファミリアが若者の憧れだったことを知らない私。私が知っているテープレコーダーを知らない今の子ども。モノや時代が変わっても、あの夏の戦いは40年近くも、子どもと元子どもの心に火をともし続けている。きっと、この先も。それなのに、体罰や理不尽な校則、子どもを痛めつける大人達は、まだ、過去ではない。(沼崎)

 

今は見なくなったモノ

  • ★赤電話

  • ★テープレコーダー


  • 写真提供:マツダ株式会社

    ★赤いファミリア

    写真のマツダ・ファミリアは、この小説が描かれている時代に走っていた5代目。

 

村上春樹
『1973年のピンボール』
講談社文庫/定価550円(税込)

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1960〜1980年代を舞台とした作品、又はその時機に活躍した作家として真っ先に村上春樹が思い浮かびました。若さという儚さの中で感じる寂寥感やノスタルジーをひしひしと感じる作品です(僕はまだ若者ですが……)。(千羽)

 

今は見なくなったモノ

★ピンボール
ゲームセンターでもほぼ見ることはなくなり、 今ではパソコンやスマホのアプリに入っていますね (駄菓子屋でピンボールゲームのようなものは見たことがありますが……)。

 

村上春樹
『風の歌を聴け』
講談社文庫/定価495円(税込)

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主人公がよく通うバーにジュークボックスが置いてある描写が出てくるのですが、実際に目にしたことはありません……。ついこの前、トム・クルーズ主演映画の『トップ・ガン』を観ていたら、最後のシーンで別れたはずのヒロインがジュークボックスで2人の思い出の曲を流しながら再び登場するという演出があり、思わず涙しました。 (戸松)

 

今は見なくなったモノ

★ジュークボックス
日本では、1950年代なかばから1970年代にかけて普及。飲食店やホテルなどに設置されていました。国内にもまだ現存するジュークボックスがあるようですが、出会えたらレアですね!

 

安部公房
『砂の女』
新潮文庫/定価649円(税込)

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今は見なくなったモノ

★汽車
小説の頃は“蒸気機関車“がまだ活躍している時代でした。現在はご存知の通り私たちの交通手段のメインは電気を動力とする電車に代わりましたが、地方では、ディーゼルエンジンを動力とする列車(気動車)、最近では大容量蓄電池を搭載した電気式ディーゼル動車、そしてハイブリットディーゼル動車なども活躍しています。

 

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