エッセイ・日記文学 大集合!
『読書のいずみ』Selection P2
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▼特集「日記」記事一覧

山崎佳代子
『そこから青い闇がささやき』
ちくま文庫/定価880円(税込) サラエボの大学で学び、今もセルビアで創作活動を続ける日本の詩人が、ユーゴスラビア内戦下の暮らしを綴ったエッセイ。ごく普通の人々の別れや悲しみ、友情から、対立という言葉だけでは収まりきらない多民族国家の姿が見えてきます。ありふれた日常を書き残すことの意義について深く考えさせられる一冊です。
(千葉大学 三好一葉)
原田マハ
『やっぱり食べに行こう。』
毎日文庫/定価770円(税込) 美術小説の取材や旅行での食べ物との思い出について綴られたエッセイ。旅先の空気感、著者の気持ち、おいしそうな食べものの描写を読んでいると気がつくと笑みがこぼれている。いつか私も行ってみたい食べてみたいと、未来のお出かけに思いを馳せる一冊。
(早稲田大学 力武麗子)
益田ミリ
『美しいものを見に行くツアー
ひとり参加』
幻冬舎文庫/定価649円(税込) 北欧のオーロラ、モン・サン=ミシェル、台湾の天燈祭など様々な美しいものを見に行くツアーに参加するエッセイです。他のツアー客の様子や個性的なお土産など、著者ならではの視点を楽しめます。ガイド付きツアーにひとり参加というとハードルが高く感じると思うのですが、この本を読めば参加したくなること間違いなしです!
(大阪府立大学 田中詩乃)
馬場錬成
『大村智ものがたり』
毎日新聞出版/定価1,210円(税込) ノーベル賞受賞者大村先生の好きな言葉、「一期一会」と「至誠天に通ず」を先生の人生から実感できる本だった。共同作業するチームメイトへの配慮、他人との繋がりを大切にすること、何事にも全力で取り組むことなど、目の前のことに囚われて情熱を無くしつつあった自分への良い薬になった。
(電気通信大学大学院 木村壮一)
稲垣えみ子
『人生はどこでもドア――
リヨンの14日間』
東洋経済新報社/定価1,540円(税込) 何の準備もせずに!? 憧れの海外、フランスのリヨンへ旅立った稲垣えみ子さんの14日間の旅行記。次々と訪れるハプニングや見知らぬ土地での不安をどう切り抜けていくのか。マルシェで買い出しをしたり、カフェに通ったり……人と人の繋がりを感じる一冊。《今日の小ネタ》のクスっと笑えるエピソードやマメ知識は必読!
(千葉大学 高津咲希)
笠井献一
『科学者の卵たちに贈る言葉――
江上不二夫が伝えたかったこと』
岩波書店/定価1,430円(税込) 江上先生の研究哲学が詰まった本だった。4月から大学院に通い始め、自分の研究意義に迷っていたところ、先生の言葉に救われた。大事なことは、野次馬的研究だろうと、一度始めた研究に責任を持って最後まで行うこと。修士課程は短いからこそ焦ってしまうが、必ず自分はお宝を見つけられると自己暗示をかけて乗り越えたい。
(電気通信大学大学院 木村壮一)
カルル・フリードリヒ・ガウス〈高瀬正仁=訳〉
『ガウスの《数学日記》』
日本評論社/定価3,630円(税込) 自然科学の多方面にその名を残す万能の天才・ガウス。彼が19歳の頃からマメに記しつづけた数学日記は数学史家・高瀬正仁の名解説と共に現代日本で蘇る。正17角形の作図法の発見からはじまる彼の探求の日々、そして発見の数々は、今もなお数学界で燦然と輝く。それはもうまったくキラキラと。
(東京工業大学 中川倫太郎)
ダニエル・キイス〈小尾芙佐=訳〉
『アルジャーノンに花束を』
ハヤカワ文庫/定価1,078円(税込) ダニエル・キイスによるSF小説。32歳のチャーリイが脳外科手術を受け、3歳児の知能から天才と言われるまでに変貌する過程がチャーリイ自身による経過報告という形式で綴られている。月日を経てチャーリイはどのように変化し、何を感じ、何を考えたのか。また、周囲の人間の言動はどのように変わっていくのか…。
(千葉大学 高津咲希)
森下えみこ
『今日も朝からたまご焼き』
KADOKAWA/定価1,045円(税込) 森下えみこさんのコミックエッセイにはまったきっかけの本。主人公は、初めてのお弁当作りに奮闘するOL・みのり(通称みのさん)。見栄えのために嫌いなプチトマトを入れようとしたり、冷凍食品を使った手抜きを覚えて楽しんだりする姿にほのぼのさせられる。よし、私も明日からお弁当を作ろう(とは思わなかった)。
(名古屋大学 後藤万由子)
歌野晶午
『絶望ノート』
幻冬舎文庫/定価922円(税込) 同級生にいじめられている主人公が「絶望ノート」という名前の日記を書くところから物語は始まります。その少年はある日拾った石を神様として崇め始めたところ、同級生に天罰が下されていきます。家庭問題もあり読むのは苦しいですが、ミステリらしいどんでん返しもある作品です。
(新潟大学 古沼花月)
梨木香歩
『物語のものがたり』
岩波書店/定価1,540円(税込) 『秘密の花園』や『赤毛のアン』を梨木さんはどう読んだのか。書き手である梨木さんの読み手視点を追体験できる、貴重な一冊です。私自身、赤毛のアンシリーズが大好きですが、なぜ当時の日本人女性の心を捉える作品だったのか、新たな着眼点と分析に出会えました。梨木さんの紡ぐ言葉がすてきです。
(慶應義塾大学 手賀梨々子)
森下えみこ
『40歳になったことだし』
幻冬舎文庫/定価550円(税込) 40歳を迎えたイラストレーター・森下さんが、憧れの東京に引っ越した時のエッセイ。人生について色々と考える時期、落ち込んだり、少し良いことがあったりとする様子が、森下さんのふわっとしたタッチで描かれているのが絶妙。
(名古屋大学 後藤万由子)
安達茉莉子
『臆病者の自転車生活』
亜紀書房/定価1,760円(税込) 著者が自転車と出合ったことで新たな世界を発見し変わっていく日々を鮮やかに描いたエッセイ。爽やかな読後感で、自転車に限らず何か新しいことに挑戦したいと思う方の背中を押してくれるような一冊です。
(大阪公立大学大学院 福田望琴)
宮下奈都
『はじめからその話をすれば
よかった』
実業之日本社文庫/定価693円(税込) 宮下さんの家族が登場します。旦那さんとの出会いや、3人の子どもそれぞれとのエピソード。家族をあたたかく見つめる宮下さんの眼差しが一つ一つの言葉から伝わってくる、ほっこりするエッセイです。お互いを思いやる気持ちをもつ家族は結束力があるのだと、宮下さんの家族をみて感じました。
(慶應義塾大学 手賀梨々子)
穂村弘
『世界音痴』
小学館文庫/定価616円(税込) こんなにだらしなくて情けないのにどうして美しいんだろう、と感じるエッセイだった。それは、穂村さんの穏やかだけど鋭い視点を通して描かれる生活の節々に、共感が散りばめられているからだと思う。また、各章末の短歌も、このエッセイを楽しめる要素の一つだ。短歌に触れる一冊にもなる、お得なエッセイだと考える。
(法政大学 大木創仁朗)
向田邦子
『父の詫び状』
文春文庫/定価726円(税込) 向田邦子のエッセイは、「自分語り」とはまったく違う。心地よいリズムの文章は、周囲の人々を描写するもので、その筆に宿る、理性的だが温かい感情が、向田の姿を浮かび上がらせる。表題作「父の詫び状」はもちろん、アイスを売る話やタクシーに乗る話など、時代の空気までもが写し取られている傑作ぞろい。
(京都大学 齊藤ゆずか)
穂村弘
『野良猫を尊敬した日』
講談社文庫/定価715円(税込) 穂村さんは、自分を語る。日常生活や思い出を書いて、「世界」と上手く接続できない感覚を読者に追体験させる。上手く生きるなんてできないよね、と声が聞こえてくる。「歌人の書いたエッセイ」というより「歌人がエッセイという形で歌っている」と紹介したい。たった数ページでも、はっと心を掴まれる一文に出会える。
(京都大学 齊藤ゆずか)

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