エッセイ・日記文学 大集合!
『読書のいずみ』Selection
▼特集「日記」記事一覧
作者の日々のできごと・体験・感想を綴ったエッセイや日記文学作品を『読書のいずみ』委員と読者スタッフが選びました。コミックエッセイもあれば研究記、旅行記までジャンルはいろいろです。作者の日常や考えに触れられる、物語とはひと味違う読書体験を皆さんもお楽しみください。
- 高野悦子
『二十歳の原点』
新潮文庫/定価572円(税込) 学園紛争のさなか、理想に恋に煩悶し二十歳で鉄道自殺を選んだ女子大生の日記。70年代 に若者のバイブルとしてベストセラーになった一冊で、文体に時代こそ感じられるのですが、自らの孤独さ、未熟さやコンプレックスと真摯に向き合う思索には、今読んでもはっとわが身を省みさせられるものがあるように思います。
(千葉大学 三好一葉)
- 加藤シゲアキ
『できることならスティードで』
朝日文庫/定価693円(税込) おそらく私が人生で唯一読んだエッセイです。エッセイの合間にある掌編小説もとても面白いのですが、特にお勧めが《岡山》と《肉体》です。老いた祖父との心温まる会話の《岡山》と、舞台観劇を起点とする肉欲と食欲の《肉体》と多様な内容で楽しめます。
(新潟大学 古沼花月)
- ジェーン・スー
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』
幻冬舎文庫/定価693円(税込) 現在もエッセイスト、ラジオパーソナリティーとして活躍するジェーン・スーさんの9年前に発売されたエッセイ集。「女子」というカテゴリーから、年齢的にも精神的にも抜け出さないといけないことへの葛藤が鋭い文章で書かれています。「女子」に限らず、何かにカテゴライズされることにモヤモヤする方にオススメです。
(名古屋大学 光野康平)
- 若林正恭
『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』
角川文庫/定価704円(税込) 「考えすぎじゃない?」と、よく言われる人に読んで欲しい。この本は、オードリーの、いや、人間・若林正恭の生き様だと思う。世の中と自分を分析して、照らし合わせながら自分の身のこなし方を考えあぐねている。この一冊は「何かを変えろ」とは言わないけど、自分を合わせていけばいい、と肯定してるような一冊だと思う。
(法政大学 大木創仁朗)
- 松本ぷりっつ
『ぷりっつさんち 7』
主婦の友社/定価1,100円(税込) 『うちの3姉妹』の作者の最新刊です。成長した三姉妹の様子を見れるのは勿論、フーちゃんやスーちゃんの就職、進路の話が印象的でした。夢を追うか手堅く生きるか、就職活動中の学生だけでなく真剣に何かに打ち込んでいた学生はこのエピソードに勇気をもらえると思います!
(大阪府立大学 田中詩乃)
- さくらももこ
『ももこの世界あっちこっち
めぐり』
集英社文庫/定価550円(税込) 『ちびまる子ちゃん』で知られるさくらももこのエッセイ。旅する舞台は太陽が燦々と照りつけるスペイン、バリ島、ラスベガスetc。夫にドッキリを仕掛けたり、逆に恥をかいたり……。著者の軽快なタッチと、それを支える海外のおおらかな雰囲気が合わさり、温かな笑いを届ける。疲れた時にどうぞ。
(千葉大学 古本拓輝)
- 森見登美彦
『美女と竹林』
光文社文庫/定価628円(税込) 森見氏の実体験と妄想の入り交じった随筆集! 大学時代の研究話に共感したり、急に始まる竹林SFに引き込まれたり、美女と竹林の関係性語りに唸ったり。森見氏特有の言葉を大事にこねこねした愛嬌溢れる文体の中で美女と竹林への愛が語られ、我々はいつの間にか青々とした美しい竹林へ誘われているのです。
(京都大学大学院 徳岡柚月)
- 益田ミリ
『考えごとしたい旅
フィンランドとシナモンロール』
幻冬舎/定価1,540円(税込) コーヒーを飲みながら、ゆっくりとしたい休日におすすめの本。時間があれば、一気読みしてしまうほど読みやすい。作中の出来事に五感が刺激され、途中からシナモンロールが食べたくて仕方がなくなること間違いなし。ミリさんの旅を通して落ち着いて日常を見つめることで、日々の生活もちょっと楽しく感じる。
(信州大学大学院 山崎ひかり)
- 上橋菜穂子
『明日は、いずこの空の下』
講談社文庫/定価660円(税込) 上橋さんの描く世界観はどのようにして創られたのだろう? と、ファンなら一度は考えたことがあるはず。上橋さんが心動いた出来事を追体験し、上橋ファンタジーの源流を発見するファン必読のエッセイ。上橋さんの豊かな感受性に触れて感動する一方、旅先のハプニングには、つい親しみも感じてしまう。
(信州大学大学院 山崎ひかり)
- 渡辺祥子
『3.11からのことづて』
TOブックス/定価1,100円(税込) 東日本大震災から3年、そして関東大震災から100年目に書かれたもの。災害と生きる我々が自然の脅威にさらされたとき、そこに立ち現れるのは一種の希望ではないか。これは過去の震災の描写ではない、未来に起きる災害への心の処方箋である。災禍を乗り越えた先人たちの知恵と言葉の結晶だ。被災地に芽吹いた希望を集めたエッセイ集。
(千葉大学 古本拓輝)
- 太宰治
『太宰治全集 11』
筑摩書房/定価7,590円(税込) 《悶々日記》が特に好きです。「この一年間、私に就いての悪口を言はなかった人は、三人? もつと少ない? まさか?」自信なくうじうじ。憤怒。含羞。かと思えばひとりくすくす。悶々ネガティブで破天荒で繊細。そんな太宰が可愛くて仕方ないのです。リズミカルな文章が頭の中で跳ねて、思わず口ずさんでしまいます。
(京都大学大学院 徳岡柚月)
- 夏目漱石、谷崎潤一郎、江戸川乱歩ほか
『〆切本』
左右社/定価2,530円(税込) 太宰治、松本清張、西加奈子、小川洋子、、、などなど様々な作家の〆切にまつわるエッセイや日記などが集められた一冊。〆切が迫りすべてを投げ出したい時に読んでは、有名作家の〆切エピソードに親近感を覚え元気をもらっている。〆切とにらみ合ったことのあるすべての人に読んでほしい。
(早稲田大学 力武麗子)
- アン・モロー・リンドバーグ〈吉田健一=訳〉
『海からの贈物』
新潮文庫/定価539円(税込) 飛行家の妻として、また自身も飛行家として活躍した著者による、女性の幸せについて書かれたエッセイ。著者の押しつけがましくなく、俯瞰的で英知に満ちた視点に、読むたびに感嘆させられます。人生の師として仰ぎたい一冊。
(大阪公立大学大学院 福田望琴)
- 佐藤秀明
『三島由紀夫紀行文集』
岩波文庫/定価935円(税込) 三島由紀夫の旅行記録がまとめられた本。印象的な街の描写は読者を空想の旅へといざなう。活字からその土地々々のにおいが漂ってくるよう。三島の卓越した表現力に感嘆するばかり。去年の初春、僕はこの本を携えて西日本を旅した。文庫本の水濡れや汚れも今は愛おしい。この疵に僕の旅の記憶が染みついているから。
(東京工業大学 中川倫太郎)
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