全国食堂セミナー 講演「生きる力をつなぐ 〜生協食堂の未来〜」

生協食堂の利用について

さて、みなさん、食堂1人当り利用高を計算してみましょう。供給高は、みなさんがご担当されている店舗のあるキャンパス(地域)の食堂の合計とし、そのキャンパス(地域)の組合数で割ると、1人当たり利用高が出てきます。

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学生組合員1人当りの食費支出は、ざっと月2万円と覚えておいてください。自宅生が11000円ぐらい、下宿生が23000円ぐらいです。厳密には地域によってその構成も変わってくるので、学生生活実態調査から調べて算出します。長期休暇を勘案し、在校期間を10ヶ月と計算すると、2万円×10ヶ月で、学生1人あたりの「食需要」は年間20万円と試算されます。

この「食需要」に対して生協食堂の利用割合をいかに高めていくか、中四国で最重視して取り組んできたところです。

その結果、今ではどうなっているかと申しますと、「1人当り利用高全国比較」という表に示す通りです。赤い棒が2003年度、国立大学法人化の直前ですね、青い棒が2015年度の実績です。全国平均2015年の2万145円に対し、中四国の「組合員一人当り利用高」は、3万6982円です。ところが、2003年を見てもらいますと中四国は全国平均以下の1万8000円でした。この10年で約3万7000円へと2倍に増加しています。

今日の2つ目のテーマは、中四国がどのようにして利用を倍加したのかを、みなさんにご説明することです。

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先ほどのデータは中四国全体のものでしたが、今度は会員別です。2003年と2015年の供給高です。同じく赤い棒が2003年、青い棒が2015年で、大体どの会員生協もこの10年間ほどで供給高が倍、高知大生協では3倍近く供給を伸張してきております。もう少し比較しやすい数字を出しました。皆さんが所属しておられる大学生協のキャンパスの学生人口と見てもらえれば比較しやすいと思います。上の広島大学から水産大学まで供給高順に並べてみました。広島大学から徳島大学までが国立大学です。この下、松山大学から水産大学校までは私学もしくは公立の大学です。席数の充足率は国立大学が悪いですね。国立大学では、香川大学のみ100%を超えています。学生一人あたりの利用高で5万円を超えているのは広島、岡山、香川、鳥取というようなところでございます。

事業剰余に関してですが、香川大学、鳥取大学、徳島大学、広島修道大学、四国学院は、昨年、施設投資がありましたので事業剰余もマイナスになっています。岡山が1番優等生ということですね。

事業の再構築を始めようとした時に1番最初にやらなければならないことは、食堂事業の存在価値、すなわち目的(ミッション)・目標(ビジョン)は何か?を問うことから始めないといけません。ちなみに、「企業の目的は顧客の創造にある」とは、ドラッカーの有名な言葉です。今日お話した報告などを基に、是非自分の仕事の範囲内で考えた場合、どのような目的・目標が設定できるのかを考えていただきたいと思います。

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私が事業連合に異動して2年目の2003年実績をあげています。繰り返しになりますが、中四国では、学生組合員1人の年間20万円の食の総需要に対して、生協食堂の利用高は2万円弱しかありませんでした。つまり学生の食生活の10分の1にしか関与できていない。この時、上司から指摘されたのは、「1割で組合員の食生活に貢献しているとは言えないだろう。」との厳しい言葉でした。そう言われても、それなりに必死に頑張ってその数字を維持しているのだからと思いましたけれども、「再構築」とはそういうものだと言い聞かせ考え直しました。

再構築を考えるにあたって、悩んだ末に、食堂が利用されない理由を考えてみることから始めることにしました。通常、我々の食堂に来て目の前に食べている人の食事の取り合わせとか、内容は分かるのですけども、食堂に来ていない人の食事はどうなっているのか?生協食堂をどう思っているのか?が分からないので、まずは、調べてみようということになりました。

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このグラフの結果のとおり、「食堂を利用しない理由」は、我々が最も力を入れていた価格であったり商品構成であったり商品の品質であったりそういうところではなく、利用しない理由の上位は、混雑とか、大学に不在とか、生活スタイルとの不一致だということが分かりました。そうなると、努力の方向が全く違っていた。もちろん商品をきっちり作っていくとか、適正な価格にするとかも必要なのですけれども、違うところに、もっと深い問題があるのではないかという話になったわけです。