全国食堂セミナー 講演「生きる力をつなぐ 〜生協食堂の未来〜」

学生の食生活の背景とミールカード

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これは、食堂事業の転機を表した1986年からの中四国の食堂供給高の推移グラフです。中四国全体で2004年時は20億でしたが、2014年には40億を達成し、この間で、供給高が2倍に増加しました。10年間の年間平均伸張率をだしてみると、1年間に7%伸張です。逆に言うと、毎年7%伸張を10年し続けたら供給高は倍になるということです。今年の供給高の見通しは45億円となっております。振り返ってみますと、1992年から1994年あたりで、業務改革を推進しました。事業連合の体裁も整え、店舗と事業連合との機能分業も完了し終えた1995年頃から停滞し、長期停滞・低落の10年にもだえ苦しみました。どんなに頑張っても伸びない。岡山大学生協が事業を開始した1995年頃は少し上がっているのですけれども、以降、苦しい10年間が続きました。次の直近の10年間は、食育事業を組織のミッションとすることによって伸張に転じさせることができました。

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これからのビジョンは、食需要の過半数に迫ることです。食需要は、中四国の学生合計で200億です。2015年度の食堂供給高が42 億だったので、これにショップの食品18億を加えると60億になります。それなら、60億を100億まで持っていけるのではないかと、思っています。10年間で60億を100億にしようとしたら、年間5%伸長し続けたら達成できるという、皮算用です。この規模になってきたら、生協としては、かなり食習慣を改善して学生の勉学成長に貢献できている状態であろうし、食堂の席も足りなくなってくるので新しい食堂を大学と一緒に実現していったり、供給高が上がるに連れて、新しい未来が見えてきたり、新しい実践がでてきたりするのではないかなと、私は思っています。生協が健全であることが目に見えて大学の利益につながる、学生さんが元気になるし、施設はきれいになるし、朝食はちゃんと食べるし、というような状況になれば嬉しい限りです。

こういう事に関して、生協職員はどう思っているのでしょうか?
入協2年目の山田さんという鳥取大学生協の女性職員が、大学の食育の授業に呼ばれて話をしていまして、そのために作成したスライドを少しご紹介します。無音で文字だけ紹介します。

【スライド内容】
食と健康でつなげる学生の未来

鳥取大学生協 山田 綾

大学生の頃の私

  • ひどい食生活!生活習慣もひどい!
  • 自炊はほぼしない(できない)
  • ミールカードは申し込んでいない
  • 食堂=大学の中の便利な飲食店
  • 友達はいっぱいいるしアルバイトはやりがいがあるし研究は楽しいしそれでいいや

鳥取大学生協食堂部に就職が決まる

  • …え?食堂部?と思った。
  • なんとなく、学生と話せる機会が少ない気がした。
  • 正直不安だった。
  • 食堂部の仕事って何?

卒業前、ある友人にこう言われた

  • 山口大学で本当に良かった!
  • 友達もいっぱいできたし!
  • 学部で首席もとれた!
  • 夢だった公務員になれた!
  • こんな充実した大学生活を送れたのは生協職員さんとミールカードのおかげ!

3年間ミーラーだった友人

  • 体が弱くて勉強の継続が大変だった。
    でも食事だけは確保されてたから学業に100%打ち込めた!
  • 不得意な自炊も少しずつチャレンジできた!
  • 勉強が辛い時、体がしんどい時、いつも生協職員さんに励まされた!

友人の話から考えたこと

  • 大学生の夢や挑戦を、食事の面から応援できる!
  • 大学生の暮らしに密着した生協職員だからこそできる事がある!
  • 大学生協食堂はただの大学の中の飲食店ではない。
  • ミールカードはやっぱり必要!!

このように、食堂のことやミールカードのことを考えてくださっている職員さんがいるおかげで広がっていっているのではないかと思います。
さて、これからの課題です。

昨年の食生活アンケートによると、食堂を利用しない最大の理由は混雑しているからということです。ミールカードを持っている人も持っていない人も共通でした。食堂施設を拡充しなければなりません。生協食堂の競争先は、こちらの勝手な解釈かもしれませんが、「節約主義」です。普段の食事を10円でも20円でも安くしたい、別に健康のことはどうでもいい、生協食堂と対比しているものは、普段の食事です。生協食堂で食べるより、下宿で食べたほうが安いというものです。たとえば、生協食堂で出しているご飯、いくらだったらいいと思う?と聞くと、Mライス70円ぐらいだったらいいかなあという感覚です。これではダメで、ちゃんとした食育をしなければいけないし、全員にミールカード持ってもらうのが一番です。ミールカードを持っている方と持っていない方で価格評価は二極化しています。次に、食生活の意識と行動のギャップについてです。朝食の欠食率が高いと申しあげましたが、毎食食べたいという人は92%です。野菜摂取を心がけたい人は、97%。これがさきほど指摘させてもらった、意識を行動に変えることが出来ない、その変えるという作業を生協がお手伝いしないといけないということですね。

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節約主義について食堂利用の頻度別実態で見ますと、ヘビー層(週に4回以上生協食堂を利用する人)は46%を占め生協食堂での平均利用金額は548円、ミドル層は30%を占め491円であるのに対して、ライト層は14%を占め297円という結果です。ヘビー層は、ミールカードホルダーが8割を占めています。これが二極化という状態で、生協食堂の価格が高いという層はやはりライト層です。ヘビー層はそんなに思っていない。そんな状況がございます。

これらの状況に対して、ミールカードだけ売っていればいいというものではなくて、普段の日常の業務が本当に学生さんにとって響く事業になっているかどうかが、ミールカードを利用し、来年も続けたいという動機に繋がっていると思います。

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このポスターのタイトルは、「学食で食べるって、おいしいし、楽しい。」です。旬の食材や地域の食材を使って、健康にいいヘルスフードを、売れ行きはあまりよくないですけれどもきちんと織り交ぜて行こうとしています。ヘルスフードと言いながら、爆発的に売れるのは唐揚げとか、とんかつとかそういうメニューになってくるわけですけども、野菜がたくさん摂れるメニューもきっちり展開していこうとしております。

さて、食堂施設の問題です。食堂施設の開発が求められています。この茶色いグラフの方が食堂の席数、エンジ色の方がミールカードホルダーの数です。

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ちょうど2010年にミールカードホルダー数と席数が逆転していまして、ここから、ミールカードホルダーがずっと席数を上回っています。この10年間で5000席くらいは席が増えてきたのですが、ミールカードホルダー数がそろそろ席数の2倍になろうかとしていて、席数に対してのミールカードホルダー数も限度に近づいています。

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施設の充実に当たっては、『食育』事業施設政策というものを作っていまして、飲食総需要の過半数を到達目標にした時の施設のビジョンを考えておこうというものです。大学と協力して生協も投資費用を分担し、最適の店舗席数ができたらすばらしい。投資の考え方、ミッションは、生活基盤を主体的に実現する、生協が組合員さんのために実現していこうということです。設備投資というものは、将来の展望、長期的観点からどうしても実施しなければなりませんし、過剰投資を恐れるあまりに必要な事業の投資を怠ると、事業と組織は疲弊し長期的に存続する基盤を失うことになります。中四国では、メインキャンパスのメイン食堂のリニューアルが一巡しまして、今後、立地を探して、大学に働きかけていくという取り組みが必要になってくると思っています。

2002年からの、施設の新設・改修・開発の実績(食堂、カフェ、サテライト店舗)をあげています。増席数は5900席です。1万席から1万6000席くらいに増えてきております。食堂供給高は、20億から45億へと増加しています。席数と供給のバランスをとりながら伸びてきたといいますか、たまたま耐震改修の工事が集中したこともあり、進んできたというのが経緯です。

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次は、ミールプランの連鎖という図です。プラスの連鎖と言っています。ミールプランというのはミールカードと食育をサポートする活動とヘルスフードを提供する活動と、食文化の継承の課題を包括する概念です。和食を食べていただくとか、地域の食材について知ってもらい、使うとか、そういったようなことを掲げております。ミールカードが増加することによってこういう良い循環が生まれる。大学にも評価されるし、大学自身も評価されることになるようなプラスの連鎖を作りたいと思っています。

この間リニューアル・新設した、中四国の食堂店舗をいくつか紹介します。
2009年1月にリニューアルした高知大学生協朝倉食堂です。もともと300席しかない老朽化した店舗を、大学法人化の際に、「生協もしっかりした改装プランを持っているので、一緒にやっていきましょう」という提案から始めて数年かがかりで実現した食堂です。大学と協力して食堂・ショップを含め学生会館を全面リニューアル。増築し席数を倍増しました。岡山大学生協のピオーネユニオンも同様に建築された食堂です。山口大学生協では、食堂ホールを拡張しました。これは今年に入ってからのリニューアル施設です。徳島大学生協のダイニングキララ。広島修道大学生協のアルカディア、島根大学生協第1食堂ソーニョ、これらは大学と協力し全面リニューアルと行いました。島根大、高知大、岡山大、愛媛大、徳島大、広島大、香川大、鳥取大の各医学部キャンパスでの運営受託、食堂リニューアルが続きました。これは徳島大生協のくららという医学部の中にあるサテライト店舗です。食堂は大体学生さんが勉強しているところから歩いて遠いところにあります。サテライト店舗のコンセプトは、学生さんが勉強し生活している場所にお店を出すことです。くららは、医学部キャンパスの中央にありまして、建物の正門のドアを入ったところにある非常に便利なお店です。大学からカフェをやって欲しいとのご要望に対しては、ベーカリーカフェを展開しています。これは鳥取大、これは香川大、これは島根大です。愛媛大学生協はベーカリーを含む、カフェ、サテライト店舗を6カ所運営しています。

最近、松山大学生協は大学の方からレストランをやらせていただくことになって、レストランとカフェを新たにオープンしております。香川大学生協は、先ほどのベーカリーの設置と同時に、カフェテリアも改装したのですけれども、そのときに学長先生からのご要望にもお応えして、さぬきうどんの本格的なお店を作りました。この写真の製麺所で、麺を一から作っています。出汁も昆布とかつお節といりこからとっています。冷たい方のだしは既製品なのですけれども。コーナーに並んで、欲しいうどんをオーダーして、最後は天ぷらをセルフでとれるようにしています。みなさんすぐにお分かりの通りだと思いますが、ここだけでは絶対に儲かってはいないと思います。時々、ご近所の方から、「今日開いています?」との問い合わせ電話がかかってくるようです。地元のニュースで何度か取り上げられたりして、大学の方も喜んでおられます。このうどんコーナーは、受験誌「蛍雪時代」に「地元名物がある学食」として記事を載せて頂きました。

この写真が、中四国の食堂職員のメンバーです。若手も増えてきています。今後、みなさんの会員生協、事業連合さんにいろいろお世話になると思いますが、温かい目でよろしくお願いしたいと思っています。

最後に「組合員と大学と共に発展するブランドに」と、組合員の生きる力を高めること、そのことによって成長が喜びとなる、その過程をサポートして、我々生協はその学生さんたちが成長するための体験の場を提供する、このような取り組みによってブランドを作っていこうと提起しています。今年は、これから先のために、長期計画の2025年の最終の10年間に向けた実行計画である、「これからの10年」という政策を作る予定になっています。

組合員、大学と共に発展するブランドに

  • 住い、食、学び(「基盤サービス」と呼ぶ)が成長分野
  • いずれの分野も、自らが運営に責任を持つことによって組合員から信頼され、他に真似ができない、大学になくてはならない存在になることが成否の分水嶺。
  • それぞれの事業の目的は、組合員の生きる力を高めることによって、成長が喜びとなるその過程をサポートすること。 「体験」の場を提供。
  • 結果、事業を通じて学生が成長し大学本来の活動が目に見えて発展する、生協が健全であることが大学の利益につながる状態を作り出すこと。
  • つまり、大学生協の価値は学生が成長するための共有の場=ブランドとなること。価値の源泉は重厚長大(マスメリット)から創造性へと移行。

以上、長々とお話させいただきました。
みなさまのこれからのご活躍を祈念いたします。

最後に、生協食堂の未来として、1つフレーズを作ってみました。

「安全、安心、そして健康」 いかがでしょうか?

以上で、私からの話は終了したいと思います。ご清聴ありがとうございました。