全国食堂セミナー 講演「生きる力をつなぐ 〜生協食堂の未来〜」

食育事業の着眼点

私たちの目の前にいる学生さん、教職員の方も含めて、全員が健康になりたいと思っておられるのではないかなと思います。つまり、「健康」という万人共通の巨大なニーズが横たわっているのです。

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ところが、食や運動を通じて完璧に健康を自分で向上させていっている人はあまりいないと思うのですよね。食育事業が成すべきことは、空腹を満たすだけとか、節約第一の食生活ではなくて、食を楽しみ、健康になり、何よりもその大学の中で勉強し、卒業して就職し、それから結婚し、子供を育てるという、そういう生きる力をつけてあげること。それが、食育事業が成すべきことで、そのスイッチを押すのが生協の私たちということになります。みんなに働きかけて、食生活をちゃんとするためのツールであることを理解してもらい、ミールカードを持ってもらう。そうすると、今までにない新たな市場が誕生します。

市場というのは顧客の集合体なので、市場の誕生とはドラッカーのいう「顧客の創造」にあたります。「企業の目的」、私たちの目的はこんなところにあるのかなというふうに思っています。

具体的な取り組みを紹介します。ミールカードをがんばって増やしてきてはいるのですけれども、なかなか一度には伸びないです。いろんなことに苦しみながら工夫しながら伸ばしてきています。

2002年度の水産大学の1人に始まり、2016年度には10万人の学生組合員のうちの2万7000人に購入して頂いています。もう少し詳しく紹介すると、2003年度は食券を発行してミールクーポンとして1年間実施しました。2004年に九州事業連合さんに開発・導入していただいたミールカードのシステムに我々ものっていこうということで、2005年度から定期券方式で1日上限1000円、年間12万で食べられるだけ食べていただくというミールカードを始めました。2007年には愛媛大学生協がプリペイド方式を開発しました。これは食堂にしか使えない電子マネーを5万円とか10万円で新学期に発売してカードにチャージし、なくなるとまた保護者の方にご連絡をして、振り込んで頂く方式です。さらに、2014年には、定期券方式でも、1年間で使いきれなかった金額は翌年に繰り越しできる「残高繰越方式」が開発されています。

新学期が終わったら、各生協で今年のミールカードはどうだったかという反省をして、来年どうするかという議論が始まります。その中で、このような会員生協のチャレンジが生まれています。今では、「今年から朝食システムを導入しました」などと、事後報告が来ます。それで全然問題ないので、頑張ってくださいと言っています。

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ミールカードホルダーは、新入生の5割、上回生の2割、全学生の3割に普及していますが、上回生への普及が課題になっています。これらの課題を来年どうするのか、これからの10年でどうするのかというのが私たちにとって大きなテーマとなっています。ミールカードを伸ばそうとした時、生協全体が一丸となった時に売れていくし、利用して頂けています。生協の食堂職員もミールカード普及の先頭に立っていますし、専務さん、食堂のパートさん、新学期のサポーターさん、こういうところまで、なぜ食育が大事なのかというところから理解していただいて、みんなで議論して組み立てていく、そういう中で伸びています。事業連合ががんばっているからではなくて、ひとえに会員生協さんが必死にがんばっているから伸びているのだと思います。