短歌のすみっこを伝える WebマガジンTANKANESS
短歌を始めたころ、友人に「最近、短歌を始めてん」と言うと、「短歌って、なんか難しそう……」という言葉が返ってきた。
短歌を詠むこと(make)、短歌を読むこと(read)。始める前は私も同じように難しそう、と思っていた。
たしかに短歌は奥が深い。工夫しようと思えばいくらでもできてしまう難しさがあるし、読み解こうと思っても読み解けない短歌も未だにたくさんある。
でも、短歌にはそれ以上の面白さがある。
その面白さをできるだけ「簡単に」伝えるにはどうすればいいのだろう、と思ったとき、ゲームにすることを思いついた。
短歌を始めてすぐの頃、周りに短歌をやっている人はいなかった。でも、「短歌ってめちゃくちゃ面白い!」と、誰かと遊ぶたびに言い続け、SNSで発信し、読書会などで短歌の本を紹介したりしたおかげで、周りにも同じように短歌初心者の友人が集まるようになった。
そうしてゲームの案をいくつか作って、試しにイベントでやってみたのが、のちに「短歌カードゲーム ミソヒトサジ」として発売する商品の原型になるものだった。
5音の言葉と7音の言葉をたくさん用意して、五・七・五・七・七の順番に並び替えるだけで短歌を作る。
これが想像していた以上に面白く、「短歌って難しそう」と言っている人たちの心を掴むことができた。
当時は印刷会社に勤めていたこともあり、カードゲームを発注するツテがあったことや、会社の同期がイラストを描くのが上手く、依頼ができたことも幸いだった。
そうして「短歌カードゲーム ミソヒトサジ」が完成した。
日常的に5音と7音の言葉を収集した。重複する言葉が無いように、難しすぎる言葉を選ばないように、でも無難すぎる言葉選びにならないように選んだ150枚のカードと、自分で書き込める空白カード、ゲームらしさを出すための特殊カードを含めた商品にした。
ボードゲームショップや大学生協、小さな書店などを中心に、店舗に足を運んで営業をかけた。嬉しいことにお店の方から依頼がかかることもあった。
ただ、自分の知らないところで、短歌のゲームではなく面白い言葉を適当に並べるだけの大喜利ゲームとして遊ばれることもあるのが、少しだけジレンマだった。そのため、自分でワークショップを行う際は、短歌の知識や名作短歌を紹介してから始めさせてもらった。
私の選んだ言葉には、カタカナの言葉やセリフも入っている。それは現代短歌では普通に使われるものだが、短歌に馴染みがない人は、「こんな言葉、短歌に使っていいん?」と言うこともある。だからワークショップには様々な短歌の本を持ち込んで、パラパラ見てもらうことで誤解を解いてもらえるように努めた。実際に、ワークショップに来た方が、後に短歌の本を買ったと聞くことがあるととても嬉しかった。
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