名作を読む(絵本篇) 最強の絵本

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母里 真奈美

はじめに

本文で紹介の本

『もじゃもじゃペーター』
ハインリッヒ・ホフマン(佐々木田鶴子=訳)
ほるぷ出版/本体2,200円+税

 1845年に発表され現代までに第100版を超える『もじゃもじゃペーター』。英語にも日本語にも翻訳され世界を股にかける絵本といっても過言ではありませんよね。え? 知らない?あの子どもにも大人にも人気の、最強の絵本を知らないですって? しょうがないなあ。では『もじゃもじゃペーター』略して“もじゃぺ”の魅力を、作者ハインリッヒ・ホフマンに代わって私が説明しましょう!
 

page1 恐るべき因果応報

 この絵本はドイツの精神科医ハインリッヒ・ホフマンが自分の子どものクリスマスプレゼントのために、執筆した作品です。どんな楽しいお話かな? 可愛いキャラクターが出てくるのかな? それとも面白いお話かな?……子どもへのクリスマスプレゼントということで面白くて優しい絵本を想像しますよね。本書は10編の短いお話です。皆さんお待ちかねの内容は……不潔にしていて周りから嫌われる男の子の話、火遊びをして火が燃え移って死んでしまう女の子のお話、スープを食べることをやめてやせ細り餓死してしまう男の子の話、母親から禁止されていた親指しゃぶりをして親指を切られる男の子の話……など。最強の絵本をなめてはいけませんよ。そう、この絵本は悪いことをすればそれなりの罰がやってくるということを非常に極端に表しているのです! この作品の中では、悪いことをすると死という名の罰につながるパターンが多く、dead or aliveな世界観。まさに恐るべき因果応報。読んでいて何もそこまでしなくても……と驚いてしまうぐらいの罰の徹底ぶり。小さいときに読まないで良かった(本音)。
 

page2 怖いもの見たさ欲求

 最強の絵本じゃなくて最恐じゃない? 鋭いですね、その最恐も兼ねて最強の絵本です。悪いことをすれば悪いことが自分の身に起こるということが明確です。けれど、単に因果応報を子どもに教えるしつけ本であっては子どもには不評ですよね。ではどうして子どもに人気なのか。私の推測兼ドイツ語友だちと話し合った見解になってしまいますが、やはり子どもに人気の理由もこの残酷な内容にあるようです。先ほど出てきました、火遊びをしていて焼け死んでしまう女の子の話。主人公のパウリンヒェンは留守番中、大人の真似をしてマッチに火をつけ始めます。それを必死に飼い猫2匹が止めるのですが全く耳を貸さず、ついに悲惨な結末を迎えるのです。「それはないでしょー」と口で言いつつあり得ない話ではない。その点に背筋が寒くなってしまいますが、嫌いになりますか、この絵本?
 純粋に疑問をぶつけると意外に嫌いと答える人は少ないものです。そこです! まさに残酷でぞっとする話が多いはずなのに絵本自体を嫌いになる人はあまりいない。むしろ「ひどいな……」と言いつつページを開いてしまう。お化け屋敷やホラー映画と同じ原理ですね。いや、ホラー映画は嫌いですけど。
 

page3 洒落が強い、ヘタウマ挿絵

 ところで、ここまでハインリッヒ・ホフマン自身が描いた絵本の挿絵について触れてきませんでしたね。すごい絵ですよ。それじゃわからないって怒られそうですけど。題名になっている一つのお話、もじゃもじゃペーターを例にとると、主人公ペーターは髪の毛を切らない・くしをとおさないから色んな方向にもじゃもじゃ伸び放題。爪も切らないから伸びすぎて、指からグネグネ曲がった細い角がはえているよう。ペーターの顔もなんだか子どもとも大人ともとれるような微妙な顔。要するにへんてこな絵なんです。上手いとは言えません。こんなに言ったらホフマンに怒られそうですけど、これ褒めてます。おかしな絵ってつぼにはまりませんか? 笑いのつぼだけではなくて、ついつい何回も見てしまう感じ。なんだこの絵は!と第一印象、そのあともう一回見返してやっぱりおかしい、と変な点をまた探してしまう。なんとなく心に引っかかってしまう、そんな手書きの絵ばかりです。私の個人的なお気に入りは、火遊びの女の子のお話で、女の子が死んでしまってから飼い猫の2匹が滝のような涙を流している場面。その場面だけ2匹の猫のしっぽに黒いリボン、猫の喪服はしっぽに黒いリボンだなんてホフマン先生あっぱれです。まあ、絵の説明を字でするには伝わりにくい部分も多いと思うので検索することをお勧めします。手元のスマホでYahoo!を開いて「もじゃもじゃペーター」で画像検索すると……ほらすごい絵が出てくるでしょう?
 

おわりに

 ヘタウマの挿絵とともに、人の怖いもの見たさの気持ちにつけ込み、世の中の因果応報を伝える絵本。やっぱり最強ですね(笑)。だからこそ時代をへて世界中で愛されている絵本なのだと私は思います。私がここに書いたもじゃぺの魅力はあくまで一部。これがすべてではないし、読む人の分だけ気づきがあると思います。興味がわいた人は読んでみてください。そして、あなたなりの魅力を教えてくださいね。
 
P r o f i l e
母里 真奈美(もり・まなみ)
東北学院大学3年生。世界旅行するならスイス。澄んだ空気と広大な自然の中で過ごせば心も体も毒が抜けそう。でも快適すぎて帰ってこなくなりそうだからやっぱり日本でいいや。


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