Essay「コメントカードの書き方」

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益本 佳奈
 

益本 佳奈 Profile

 2ページもいただいて、私が“コメントカードの書き方” なんて書いていいのでしょうか。気を抜くとネガティブな本音がポロポロこぼれてしまいそうです。仲のいい友達にエッセイを書くことになって不安だと話すと「いいやん!作家気分で。何ならホテルとってカンヅメしちゃう!?」と返され、この子は本当に私の友なのだろうか、と不安になる事件もありました。そんないたって普通の女子大生が書いたものとご容赦ください。

 

フリーダム!

 コメントカードを書く際、最初に「何のために、誰のために書くの?」という問いが出るのではないでしょうか。その問いに対し、私は“自由” だと答えたいです。なぜならこれは読書感想文ではなく、推薦文でもなく、“コメントカード” だから。コメントカードのいいところは、幅があるところだと思います。自己の記録として書いても、図書カードをもらうために書いてもいい。中にはオススメしない本を紹介するものがあっても。色々なコメントがあるからこそ、誰かがコメントカードを目にしたとき、その本を手に取りたいと思わせてくれる素敵なものがたくさんあるのだろうと思っています。今回私は図書館でアルバイトをしていたこともあり、本をあまり読まない人が手に取ってくれたらいいなぁ、と本を紹介するような気持ちでコメントを書きましたが、自分がほかに書いたものは感想文に近いコメントが多かったです。コメントは自由だと思うことで、文章の書き方や本に対しての思いもまた変化するのではないでしょうか。
 
 

私のクローゼット

 では、どのように文章を書くのか。私は作家さんではないので正直何も言えません。ですが、文章を書くときに、必ず思い出すことがあります。
 小さい時から文章を書くことが得意ではなく、そういったことから逃げることが多かった……。そんな私にも大学入試の科目に小論文があり、どうしても向き合わなくてはならないという場面がありました。どんなにテキストを読んでも、ありきたりな駄文ばかり量産してしまう私に、ある先生が言った言葉です。
「大きなクローゼットが、人にはあんねん。経験とか知識とかでできた服がいっぱいある中で、何でわざわざシンデレラの普段着みたいなボロボロのやつ掴んでくんねん。ドレスもあんねんで? ちゃんと探してきて。これ、おばあさんに魔法かけてもろても、しんどいで」
 きつい関西弁で私の心を折らないで……と思ったのと同時に、自分の言葉で書くということに対してすごく納得したのを覚えています。
 個性を生み出すこと、人と大きく異なった方法で自己を表現することは、とてもとても難しいことだと思います。それができれば素晴らしいし、むしろできるなら作家になった方がいいのでは?と余計なことも考えたりもしますが、作家ではない私が書くときには、自分にあるものの中から合う服を探すように、楽な感覚でいいのではないかと。一人一人の経験や感情は違い、それによって出てくるドレスの形や色はもし似ていたとしても、きっとちがうものでしょう。文章の正解はわからないけれど、よく着てしまったボロボロの普段着よりは、自信をもって人前に出られるような気が私にはするのです。そしてそれは、読む方にも美しく映るのではないでしょうか。
 現在進行形で、そのクローゼットを全部ひっくり返してドレスを必死に探していますが、私は果たして綺麗に映っているのでしょうか。不安でしかありません。
 長々と書いてしまいましたが、読者のみなさんが少しでもこの文章を読んで、コメントを書く億劫さがなくなっていますように。学校のレポート課題の8倍ぐらいの時間がかかりました。1500字でこんなに悩むのだからやっぱり作家さんは「人間じゃないかもしれない」と改めて尊敬し、感謝しています。
 というのが、私のこの文章に対してのコメントかもしれません……。

 
P r o f i l e
益本 佳奈(ますもと・かな)
立命館大学経済学部三回生。大阪府出身。第14回全国読書マラソン・コメント大賞金賞受賞。マイブームは、ギャルの定義について考えることです。広辞苑で引くと「女の子。若くて活発な娘。」ということは私もギリギリギャルなのか?と、しょうもないことを考えるのが好きです。

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