
『つめたいよるに』
江國香織
新潮文庫/本体460円+税
短編集であること。それが、いやたぶんそれだけが、この本を手に取った理由だった。中学2年の夏。国語教諭から課せられた読書記録日記の冊数を多く見せるため短編集を手に取った。
最初の話、デュークが死んだ。ではじまる数ページの世界に、私は泣いた。理由はわからない。当時8歳だった飼い犬をデュークに重ねたのかもしれない。止まらない涙に私は困惑していた。その後の話はあまり覚えていないし、好きとか嫌いとかいう感情も思い描けない。だがそれでも、この短編集は私にとって心に残る一冊となった。
(法政大学
みー)