Essay 音楽で巡る宇宙の旅

特集「宇宙のはなし」記事一覧


 [A long time ago, in a galaxy far, faraway…]  
 「遠い昔、はるかかなたの銀河で、、、」
  多くの方はこの文字を見ただけで『スター・ウォーズ』の壮大なテーマ曲が頭の中で鳴り響くのではないでしょうか。何本もの金管楽器が奏でる重厚なファンファーレは私たちの記憶に深く刻まれていることでしょう。今回は「宇宙×音楽」ということで、未知の世界である宇宙を音楽で表現してきた音楽家たちを紹介していきます。
 最初にご紹介するのは映画音楽の巨匠であるジョン・ウィリアムズ(1932−)。彼は『スター・ウォーズ』シリーズの他にも、『E.T.』、『ハリー・ポッター』、『スーパーマン』、『未知との遭遇』といった歴史に残る映画作品の音楽を担当しています。ここで1つこぼれ話ですが、『スーパーマン』の主役クラーク・ケントを演じたクリストファー・リーヴは、なんと『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーを演じたデビッド・プラウズから筋肉トレーニングの指導を受けていたというエピソードがあります。そのため、ダース・ベイダーがあの強靭なスーパーマンを育てたとも言えるでしょう(笑)。 ジョン・ウィリアムズは音楽界の権威であるアカデミー賞になんと52回もノミネートされるという記録を打ち立てています。広大な宇宙空間を音楽で表現することに成功した音楽家の1人です。
 また、映画が好きな方は「宇宙×音楽」と聞くと、『2001年宇宙の旅』で用いられたリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》を連想するのではないでしょうか。この楽曲は、映画の公開よりもはるか前である1896年に書かれた作品です。作中では人間の祖先である類人猿が初めて道具を使って岩をくだくシーン、つまり現代の私たちにもリンクする大きな進化が起こったシーンで《ツァラトゥストラはかく語りき》の前奏が大音量で流れます。人間を語る上で欠かせない大事な1コマと壮大なファンファーレは、これ以上ないほどマッチしています。是非一度は、映画館の迫力のある音響でこのシーンを観てみたいものです。
 ロック界でもなんと火星からやってきたというアーティストがいました。その名もデヴィッド・ボウイ(1947-2016)。1960年代の英国ロックを牽引してきたビートルズの解散、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンといったハードロックのバンドの台頭などロック界の過渡期であった1970年代初頭に、ボウイはアルバム『ジギー・スターダスト』を発表しました。救世主として異星より来たバイセクシャルのロックスター「ジギー・スターダスト」の物語からなるアルバムで、当時としてはかなり斬新な内容となっています。中性的にも見える派手なメイクで激しいロックを奏でる彼のスタイルはグラムロックという新しい音楽ジャンルを生み出し、《20th Century Boy》で知られるT-Rex もグラムロックのバンドとして有名になりました。ボウイは後に「ジキー・スターダスト」を引退し、「シン・ホワイト・デューク」(痩せた青白き公爵)といった新たなキャラクターを演じたり、1983年にはディスコ調の《Let’s dance》でヒットを飛ばしたり……等、カメレオンのように様々なキャラクターを演じてアーティスト活動をしてきました。また、彼は俳優としても活躍しており、1983年に公開された『戦場のメリークリスマス』において、ビートたけしや坂本龍一と共演をしています。
 デヴィッド・ボウイと同じくイングランド出身のミュージシャンであるスティング(1951−)もザ・ポリスというバンドで活動していた時に「宇宙」がテーマの楽曲を残しています。その名も《Walking on the moon》。激しい音楽ジャンルであるパンクロックの色が濃かったザ・ポリスが、宇宙のような浮遊感をたった3人で表現したことには、当時の聴衆も驚かされたことでしょう。グルーヴ感のあるスティングのベースに、スチュアート・コープランドが奏でる独特なドラムのリズムやアンディ・サマーズの幻想的なギターのコードが合わさり、異質な雰囲気を生み出しています。実はこの楽曲、「宇宙をテーマにした曲を作るぞ!」と意気込んで作られたわけではなく、スティングがホテルで泥酔している時にたまたま思いついたものであるというユニークなエピソードが残っています。たしかに、お酒を飲んで良い気持ちになっている時は独特の浮遊感がありますよね(笑)。この楽曲はザ・ポリスの2枚目のアルバム『白いレガッタ』に収録され、他の楽曲と共にザ・ポリスが世界的に有名になるきっかけとなったのです。
 今回紹介した楽曲以外にも「宇宙」を感じられる楽曲は沢山あります! 私たちのような一般の民間人が実際に宇宙へ行けるようになるのはまだまだ先の事になりそうですが、たまには音楽で宇宙を想像してみるのも良いかもしれませんね!
 

P r o f i l e
戸松立希(とまつ・たつき)
『読書のいずみ』委員OB。ピアノ、筋トレ、1人旅が趣味。関東の大学生でしたが、今年の4月より心機一転、名古屋で社会人生活を送っています。美味しい味噌カツやひつまぶしを食べてみたいなぁと思う今日この頃です。
 

記事へ戻る


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ