Essay「ようこそ! ムーミン谷」

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母里 真奈美
 

 ムーミントロール、スナフキン、ミイ、スニフ、ニョロニョロ、ロッドユール……。トートバッグやらマグカップやらに最近ひょっこり登場して、雑貨屋さんやキャラクターものを売るお店に並んでいるムーミン谷の仲間たち。持ち歩いている・買っている人もたくさん見かけます。けれど、残念ながらムーミンがフィンランドの妖精だということを知る人は少ないみたいですね。私はセンター試験にムーミンがでてきて話題になったことに驚きました。ムーミングッズをつかっている人たちはムーミンの友だちではないのですね。ひょっとして、ムーミン谷は今や現代の人とのつながりを失っているのでは? それはいけない。せめて、読者のみなさんをムーミン谷へご招待いたしましょう。大丈夫、3つのポイントをおさえれば、あなたもムーミン谷へ行けますよ。
 

1.みんながみんなマイペース

 ムーミン谷は何をするにもとにかく自由! ムーミンの親友、スナフキンは気づけば旅に出かけるし、ムーミンパパは夢想家であり冒険家、皆さんがよく見かけるであろうお団子頭で赤いドレスの、ちびのミイはなかなかのおてんば。彼女はいつもミルクボトル、泡立て器、スナフキンのポケットに、小さな体をするりと入れてしまいます。やりたいと思ったことにとにかく正直で、でてくる種族みな我が道を進んでいます。これは上手くいかないかも、あとあと大変かも、そんな悩みを一切抱かず行動に移すキャラクターたちに憧れます。ムーミン谷ならストレスゼロで生きられそうですからね。
 
  • トーベ・ヤンソン
    〈山室静=訳〉
    『たのしいムーミン一家』
    講談社文庫/本体581円+税
  • トーベ・ヤンソン
    〈小野寺百合子=訳〉
    『ムーミンパパの思い出』
    講談社文庫/本体581円+税

2.実は物騒

 実はでるんです、ここ。モランが。ムーミン谷は平和なことばかりではありません。それどころかいつも危険なかげがさしています。モランは不気味な女のばけもので、冷たいオーラで地面まで凍らせてしまうためにみんなから避けられています。ところで、ムーミンといえば地面から顔をだした無数の細縦長の生き物、ニョロニョロが有名ですね。でも、ニョロニョロも放電するそうなのでうかつに近づかないように。それだけでなく、自然がおかしいときもこの谷では多いのです。彗星が落ちてきそうになったり、洪水に襲われたり、近くの火山が噴火したり……。なぜ、ムーミントロールたちが文庫本にして全9巻を生き延びたのか不思議なくらい、自然が暴走しています。ムーミンパパとママが出会ったときも大嵐で暴風、高波に煽られるママを助けたのがパパでした。なので、読者のみなさん、ムーミン谷を歩くときは自然に気をつけてくださいね。彗星はよけられないと思いますが。
 

3.天変地異なんてケセラセラ

 いやいやいや、彗星に落ちてこられたら生きていけませんよ。って考えますよね。私も、です。ムーミンたちはその現実に立ち向かうわけでもなく、どうしようもないことに嘆くわけでもなく、ただ受け止めるのです。どこぞのヒーローみたいに物理的な受け止め方ではないです。星が落ちてくるから天文台にいる科学者に聞きに行こう、洪水で家が水浸しだから屋根に家具をおこう、家の中に入れなくなったから流れてきた他の家に移り住もう……。すべて、柳のようにしなやかに自然を受け止めてその上で次の行動を起こしていますよね。当の本人たちはなにも考えていないだけですが、これって実はたくましい。私たち人間だったらこうはいきません。どうしても失ったものに執着するし、現実を受け止めることに時間を必要としてしまいます。悪いことではありませんが、早く前を向いた方が何をするにも気持ちが楽ですよね。災害によって自然の強さを実感しつつある現代であるからこそ、広い心でものごとを受け入れるムーミンたちから学ぶことがあるのかもしれません。
 
  • トーベ・ヤンソン
    〈下村隆一=訳〉
    『ムーミン谷の彗星』
    講談社文庫/本体495円+税
  • トーベ・ヤンソン
    〈下村隆一=訳〉
    『ムーミン谷の夏まつり』
    講談社文庫/本体495円+税

お・わ・り・に

 この本を読む前はのんびりほのぼの、大きな事件の起きない作品なのだろうなと、勝手に考えていました。はっきり言って、子ども以外が読んだら退屈するかなあと。失礼いたしました。大人も子どももお兄さんも、誰が読んでも面白い。ムーミントロールたちは大変なことがあっても気にしない、うろたえない、うけとめる。予想以上に冒険要素が強い世界で、驚きました。海外の妖精たちのふんわりした世界観、ハプニングだらけの刺激的な物語、両方味わいたい方はぜひムーミン谷へきてください。だれでもページを開けばすぐに行けますよ。わざわざにフィンランド行かなくてもね。

 
その他のムーミン・シリーズ作品

トーベ・ヤンソン(講談社文庫)
 

『ムーミン谷の冬』
〈山室静=訳〉 本体476円+税

『ムーミン谷の仲間たち』
〈山室静=訳〉 本体581円+税

『ムーミンパパ海へいく』
〈小野寺百合子=訳〉本体629円+税

『ムーミン谷の十一月』
〈鈴木徹郎=訳〉 本体581円+税

『小さなトロールと大きな洪水』
〈冨原眞弓=訳〉本体448円+税

 
P r o f i l e
母里 真奈美(もり・まなみ)
東北学院大学4年生。ムーミン谷でニョロニョロの研究をしたいと密かに思っている。ずっと動いていることで静電気が起こり、放電できるのだろうか? 謎は深まるばかり。最近はムーミン谷以外にもパソコンを開いてマインクラフトの世界を冒険することも。

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