しまなみ海道冒険記

特集「異世界へのとびら」記事一覧


杉田 佳凜

 

「しまなみ海道」は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結び、サイクリングロードとしても有名な道である。間に六つの島(尾道側から向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島)を挟み、全長は70〜80km。そんな詳細を知ったのは、編集会議で「しまなみ海道行きます」と手を挙げた後だった。しかも「冒険」を言い訳にほとんど下調べもせず、どうなることやら……しまなみ海道冒険記、より抜きでお送りします。

尾道港

 4月某日、快晴の尾道駅前には自分と『izumi』編集部の大塚さんがいた。大塚さんは「いかにもサイクリング!」というスポーティな服装だが、自分は長ズボン(非ジーパン)にお気に入りのTシャツ、体温調節用の長袖シャツとほぼ普段着である。まずはホテルに荷物を預け、自転車の貸し出し所へ向かう。

「一日でも走破できなくはないけど、島は3、4つに絞ってのんびり観光しようか」

 言いながら大塚さんが選ぶのはクロスバイク。やっぱり冒険だし、普段乗らない格好いいのに乗りたいと思いつつ(※大塚さんは普段も乗っている)、乗り慣れないタイプに尻込みして7段変速の軽快車をチョイス。借りたヘルメットも装着しいよいよ出発するも、すぐに尾道港で船待ちに。

尾道港にて

向島

 向島に入ってすぐは車通りも少ない田舎道で、足慣らしにはピッタリだった。7段変速の自転車は快適で、クロスバイクより断然遅かったらどうしよう……という不安も何のその。青空の下をグングン進んでいく。

 そうしているうちに視界一面に広がる海! これこれ!という気分で走っていると、行く手に大きな橋を見上げることに。

「これだけ見上げているということは、あそこまで登っていくということでは……」

 青空をバックに悠々とそびえる橋。背中に冷たいものが伝っていくような錯覚。しばらく走れば、海に臨んでいたはずがいつの間にか山の中。橋の袂まで登れば見晴らしは完全に登山のそれで、眼下に咲き誇るピンクの花は何だ……? 橋の進入口に遮断機があったり、対岸側は島に橋が突き刺さっているように見えたり、小さなことが面白い。

 ひとしきり写真を撮ったあと、いよいよ因島大橋へ。この橋は二層構造のうち上を車が、下を自転車が通る構造。橋というより空中廊下に近い印象で、思っていたほどオーシャンビューではない。それでも「海を見下ろしてる! あ、船! 船ですよ!」と大はしゃぎ。

  • 進路標示を見つける前に迷子になりかける
  • 縦信号の謎を解き明かす

向島にて

因島

 因島到着後、まずは因島大橋から見えた灯台へ。これも山の中ということで自転車を置き、歩きになったのをいいことに会話に熱中することしばし。視界に飛び込んできたのはチェスのポーンのような建物が三つと灯台。どれも眩しいくらいに真っ白で、手前には木造平屋のシンプルな建物が一つ。大浜埼灯台とその記念館だ。

 記念館はもともと潮流と船の往来を示す信号所で、三つのポーンは信号として働いていた。現存する唯一の海洋木造施設であり、現在は当時の器具などを並べた記念館になっている。元入り口の看板脇には「灯台記念館説明 押して下さい」のインターフォンが。

 ♪〜〜〜〜

 まさかの音楽(しかも結構長い)から始まるガイドを聞いたあと、灯台へ降りて渡ったばかりの因島大橋を眺める。ほんの数十分前まであの橋の向こう側にいたなんて、なんだか変な感じだなぁとしみじみ。

「……ところで海、下りてもいいですか」

 しみじみもつかの間。海沿いのサイクリングだろうが砂浜に降りるのは別腹!とはしゃぎながら簡易ビーチコーミング(2017年夏号参照)開始。良いガラスが多かった。

 そしてサイクリングロードへ戻れば、青空と桜のコントラストが自転車で駆け抜けるにはもったいないほど。風がさぁっと吹けば花びらが舞ってうっとり。写真撮りたいけど止まれないよなぁ……。

「杉田さん、車道出てる!」

「すみません!!」

 他の通行者の迷惑にならないよう気を引き締めつつ、景色に見とれたり、道端で売っている柑橘類の種類の多さと安さに驚いたり。一番印象的だった景色は、ネギ畑(玉ねぎだったかもしれない)に降りしきる桜吹雪の様子。ネギの葉の濃い緑と桜のピンクが水色の空の下で合わさって、とても綺麗でどこか不思議な光景だった。

  • 灯台下のはっさく屋がまさかの定休日
    →火曜定休のお店が多く、昼食に暗雲……
  • 念願のはっさく大福タイム×2
  • 昼食のお好み焼き屋までさまよう
    →「海賊焼き」は海産物たっぷりで美味
    →青影トンネルがポルノグラフィティ「Aokage」 の聖地だと教えてもらって寄り道
  • 生口島へ渡る生口橋はオーシャンビュー!!

因島にて

生口島

 生口島は「島ごと美術館」になっているということで、屋外に置かれた造形物を楽しみにするのだが見当たらない。寄り道するような場所も見当たらない……と思っていると、休憩所で「図書館船」のポスターを発見する。

「これは押さえておかないとだね」

 走ること数分、B&G海洋センターの前で看板を見つける。入ってすぐのシャッターが下りていてヒヤッとするも、無事見学することができた。船の中には入れないものの窓から船内を覗くことはできて、積んである本もたぶん当時のまま。木造船の外観も可愛らしく、船の周りを行ったり来たり。

「大塚さん、これが例の造形物では?」

 ふと視線をずらすと、綺麗な芝生の中央にポツンとたたずむガラスの立方体が。電話ボックスの中身を抜いて完全密封したようなそれの脇には【地上と地下の間で】というプレートがある。よく見ればガラス内部の地面は芝生ではなく水たまりのようになっていて、景色に調和している、ような気もする。

「海洋センター、だから? 水?」

  • それなりに見つかった造形物たち
  • 自転車返却時の攻防戦
  • 耕三寺の拝観料が高くて外から眺める
  • 夕方の潮音山に登って向上寺を拝観

生口島にて

再び尾道港へ

 生口島の瀬戸田港から尾道港まで、船での所要時間は約40分。一日が40分に回収されるのは、空しいというよりまったく別のテクノロジーという感じだ。あんなに晴れていた空だって、いつの間にか真っ暗になっている。

 さようなら生口島、さようならしまなみ海道。初めての自転車旅だったけど、すごく快適ですごく楽しかった。天気のいい日にきっとまた来る気がする。時間をたっぷり使って走破したら、ものすごく気持ちが良いだろうから。

 自転車は生口島で返してしまったので、体一つで船に揺られていれば今日一日自転車で旅をしていたなんて嘘みたいだ。疲労でぼんやりした頭と相まって、何もかも夢のようである。

 でも。

「……実は尾道に気になる夜の本屋さんがありまして」

「晩ご飯、美味しいラーメン屋さんを教えてもらってるんだよね」

 体はくたくたなのに、心はワクワクしていて、夜はこれからで。この高揚感が冒険だなぁと思いつつ、しまなみ海道冒険記第二部・夜の尾道へ繰り出すのだった。

to be continued…?

おすすめの本


宇都宮一成
+シクロツーリズムしまなみ
『しまなみ島走BOOK』
シクロツーリズムしまなみ
本体1,300円+税

P r o f i l e
杉田 佳凜(すぎた・かりん)
広島で暮らすインドアとアウトドアのハイブリッド。読書が好きだが旅行も好き。今回の冒険で一番ピンチだったのはたぶん服装。ジーンズ以外のズボンを二枚しか持ってなかった。夜の尾道では古本屋“弐拾dB"にて荷物の重量化を果たす。

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