私たちを含めた多くの人の声や活動を受け、政府は2016年12月に、低所得世帯の大学生などを対象に給付型奨学金として月2万から4万円を給付する制度を2018年度から始めることを決め、所得連動型の奨学金制度の開始も含め2017年3月に国会で法案が成立しました。
全国大学生協連では国会会期中に、全国大学生協連で実施した「組合員対象『奨学金に関するアンケート』」の結果と、奨学金制度の拡充を求めるアピール文を各政党と全国会議員に送付しました。そこで改めて各政党と国会議員から現状の問題点と今後と活動、また大学生へのメッセージをお聞きしましたので、その回答を掲載します。※回答の無断転載はお断りします。
自由民主党 衆議院 亀岡 偉民 先生
それでも自民党は給付型奨学金制度を創設し、平成30年度か支給を開始(29年度から先行実施する法案の成立を今国会で目指しています)します。33年度には大学1年生から4年生までの学生に支給されることになりますが、そのための予算220億円を確保しました。
また、自民党は無利子奨学金において平成29年度から成績基準を撤廃するなど適用範囲を広げ、かつ残存適格者(基準を満たしているのに予算不足で貸与されない者)の解消を図ります。そのために超低金利活用型財政投融資制度(昨年参院選に公約で掲げ創設した制度)を財源として、残存適格者約2万4千人(平成28年時点)と無利子奨学金を受けている2万人を合わせた4万4千人の内、3万6千人の利子分を政府が負担して無利子となるようにしました。
しかし、さらなる負担軽減策を実現するにはより安定的で大きな規模の財源を確保する必要があります。そこで自民党は今年2月16日、総裁直結機関である教育再生実行本部の下に「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」を設置し、以後毎週、会議を開いて具体策について協議を重ねています。
なお、高等教育機関の自己収入の拡大や私学助成の拡充等の施策を引き続き推進していくことによって教育費の負担軽減にもつながると考えています。
最後に同施政方針演説ならびに1月23日の衆議院本会議における二階俊博幹事長の代表質問(奨学金部分抜粋)と安倍晋三総理の答弁を紹介しますので、ご一読ください。
子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り(誰にでもチャンスのある教育)
「邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」 明治日本が、学制を定め、国民教育の理想を掲げたのは、今から百四十年余り前のことでした。それから七十年余り。日本国憲法が普通教育の無償化を定め、小・中学校九年間の義務教育制度がスタートしました。本年は、その憲法施行から七十年の節目であります。この七十年間、経済も、社会も、大きく変化しました。子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育もまた、全ての国民に真に開かれたものでなければなりません。学制の序文には、こう記されています。「学問は身を立(たつ)るの財本(もとで)ともいふべきもの」どんなに貧しい家庭で育っても、夢を叶(かな)えることができる。そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。高校生への奨学給付金を更に拡充します。本年春から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が、無利子の奨学金を受けられるようにします。返還についても卒業後の所得に応じて変える制度を導入することで、負担を軽減します。更に、返還不要、給付型の奨学金制度を、新しく創設いたします。本年から、児童養護施設や里親の下で育った子どもたちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に、先行的にスタートします。来年以降、一学年二万人規模で、月二万円から四万円の奨学金を給付します。幼児教育についても、所得の低い世帯では、第三子以降に加え、第二子も無償とするなど、無償化の範囲を更に拡大します。全ての子どもたちが、家庭の経済事情にかかわらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。そうした日本の未来を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。
○二階俊博君
経済的に困難な状況にあっても、それが理由で意欲のある学生の進学や修学の機会が奪われてはなりません。学生のやる気を後押しし、能力を最大限引き出し、社会に生かすためには、本人の努力を支援する仕組みが必要です。党内でも議論を重ね、本年四月から、給付型奨学金制度の一部、これは私立大学の自宅以外から通う学生と社会的擁護を必要とする学生が対象でありますが、先行して始まることになりました。来年度からは、一定の成績を基準として、国公私立の自宅生も含めて支給され、無利子奨学金の貸与人員も増員することになります。児童養育制度の施設長や福島で被災した子供たちが通う高校の教師からも、これまで大学進学を諦めたりちゅうちょしていた生徒たちにとっても進学の後押しになり大変ありがたいという声が聞こえております。資源のない我が国において、教育への投資は何よりも重要であり、国の将来を見据えた長期戦略と言えるのであります。給付型奨学金制度の意義と国家戦略としての教育投資のあり方について、安倍総理にお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
給付型奨学金制度の意義と教育投資のあり方についてお尋ねがありました。我が国の未来、それは子供たちであり、一人一人の個性を大切にする教育再生を着実に進めることが重要です。どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、新年度から、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。教育投資は未来への先行投資です。一人一人の豊かな人生と、成長し続け、安心して暮らせる社会の実現に必要な国家戦略として、必要な財源を確保しつつ、教育投資の充実にしっかりと取り組んでまいります。
公明党 衆議院 石田 祝稔 先生
2017年度予算では、公明党の主張を反映し、給付型奨学金が創設されました(18年度から本格実施)。社会的養護を必要とする学生等への特別な配慮(入学時に24万円を給付)も盛り込んだ制度設計については、貸与型から給付型への転換点として、十分進学への後押しになると考えています。さらに、給付額の拡充など今後の検討課題にも取り組みます。
また、希望するすべての学生等が無利子奨学金を受けられるよう、「有利子から無利子へ」の流れを加速させるべく、毎年、無利子奨学金の対象人数を拡大させてきましたが、17年度予算では前年比で4万4千人の増加となりました。今後もさらに無利子奨学金の対象人数の増加に取り組みます。
このほか17年度予算では、貸与基準を満たしていても予算の関係で借りられなかった「残存適格者」(推計で2万4千人)の解消を図るとともに、低所得世帯については成績基準を撤廃させることができました。
一方、返還月額が所得連動する新所得連動返還型奨学金制度がスタートし、17年度進学者から選択できるようになりました。今後、公明党としては、既卒者への適用、有利子奨学金への同制度の導入、同制度に必須の機関保証料の引き下げについても推進してまいります。
公明党は、昨年秋、党全国大会での政調会長報告において、「特に近年、家庭の経済事情による教育格差が拡大しつつあり、子どもの貧困の問題も深刻です。格差を是正し、貧困の連鎖を断ち切るためには、教育の機会均等を図ることが重要なカギとなります。『教育の無償化』を視野に入れた取り組みを検討すべき時に来ているのではないかと考えます。(中略)今後、大学の無償化に向けた検討を開始すべきと考えます」とのビジョンを表明し、今年2月に設置された教育費無償化財源検討プロジェクトチームが活動を開始しております。
日本共産党 衆議院 政党本部
世論と運動の広がりによって安倍政権は17年度から給付型奨学金の一部導入を決めましたが、給付を受けられるのは、本格実施される18年度からでも1学年わずか2万人で、全学生に対する受給率は世界各国と比べ桁違いの低さです。こんな「すずめの涙」では経済的に苦しい広範な若者を支えることはできません。
日本共産党は、月額3万円の給付型奨学金を70万人(学生総数の4人に1人)に支給する制度をまず創設して規模を拡大することや貸与奨学金をすべて無利子にすることを提案するとともに、学費負担そのものの軽減を図るために、大学の授業料を国立も私学も段階的に引き下げ10年間で半減することを提案しています。これらの必要な予算は、およそ1兆5千億円(10年目)です。
日本は大学など高等教育への公的支出の割合がOECD諸国で下から2番目に低くなっています。税金の集め方や使い方を変え、高等教育予算を現在のGDP比0.5%(約2.6兆円)から、OECD平均並みの同1.2%(約6.2兆円)にすれば実現できます。
政治の姿勢を変えれば、奨学金制度の大幅な拡充と改善、高すぎる学費の引き下げは可能です。
全国学生委員会のみなさんのアンケートの結果を拝見し、多くの学生が、学費や生活費のために奨学金を利用し、返済に強い不安を感じている実態がよくわかり、あらためて、政治の力でお金の心配なく安心して学べる環境をつくることが急務と感じました。みなさんのアピール文が訴えているように、奨学金制度の拡充と高等教育予算の充実が必要です。
日本共産党は、引き続き、学生、保護者のみなさんをはじめ、多くの大学関係者と力を合わせて、みなさんの切実な願いを実現するために頑張ります。
社会民主党 参議院 福島 みずほ 先生
前進したと思いますが、しかし、まだまだ極めて不十分です。月2万円から4万円を給付する制度で、受給できる人は20,000人程度です。また無利子の受給者は4万人程度の増となりますが、有利子の受給者はまだ81万人もいます。
給付型奨学金を大幅に拡充し、無利子の奨学金を原則とすべきではないでしょうか。奨学金制度を学生ローンとするのではなく、学生を応援する仕組みに転換をすべきです。
そして、大学までの入学金と授業料の無償化をめざします。
大学の入学金と授業料を無償化するためには、国公立大学で4168億円、私立大学で2兆6808億円、全大学合計で3兆976億円かかります。これならできる、やるべきだと思います。
奨学金を借りざるを得ないのは、親の実質賃金が下がっていることと、大学の授業料や入学金が高いことがあります。
大学の入学金と授業料が無料になれば、大学生や社会が変わります。
先日、ある大学院生が、「1500万円借金がある」と言っていました。社会人を1500万円の借金からスタートしなければならないことは本当に大変なことです。
変えます!そして、現在、奨学金を借りている人たちの救済をどうするかという問題にも取り組まなければなりません。所得連動型の返済制度の拡充もしなければなりません。しかし、根本的には、無利子化していくこともめざしていきます。